出発から1ヵ月後に感じた異変

運転好きのAさんですが、1ヵ月過ぎたころから、異変を感じます。最初は毎日が物珍しいのと、豪華なキャンピングカーの住み心地もよかったのですが……。

これまで毎日、長時間運転することがなかったため、ゆっくり休みながら走っていても疲労がたまっていきます。せっかく観光していても早い時間には車に戻り休むように。

妻も運転免許証を持っているので、少しは運転してくれるだろうと期待していました。ところが大きな車の運転に慣れていないため、少し運転しただけで「やっぱり怖いから運転は任せたわ」とのんきに助手席に座っているか、後ろのソファーでくつろいでテレビ三昧。Aさんがひたすら運転を続けることになります。

しだいに、Aさんが休んでいるあいだ、妻が観光したり、ショッピングしたりと楽しんでいる姿に嫉妬すら覚え、大きなため息がでます。「こんなはずじゃなかったのに……」日々のストレスに耐えかね、さすがにこのまま続けるのは無理があると判断したAさん。日本を半周したところで断念し、妻に一度、帰宅しようと伝えます。「出直せばいいだけ、いつでも旅にいけるのだから」と帰宅することに。

しかし帰宅後、また大きな問題が。旅行前はサービスで車を販売店で預かってくれていましたが、Aさん宅の駐車場には車が大きすぎて止めることができなかったのです。困ったAさんは、販売店に相談します。預かってはもらえるものの、料金の高さにびっくりします。大きな車を持つには、思いのほか維持費がかかることを痛感します。「こんなことなら、レンタルにすればよかった」とまたまた大きなため息がでてしまいました。

夢が実現した「あと」

いま、Aさんは豪華キャンピングカーを手放そうかと悩んでいます。運転好きで日本一周に憧れ、夢が実現しましたが、安易に考えていたのが、車の維持費。退職金を夢につぎ込んだことはよしとしても、維持費はずっとかかってきます。計画性がなかったことを後悔しています。

夢が現実となったとき、想定外にかかる費用は夢には出てこなかったかもしれません。これからのことは、車とお金の専門家に相談してみますと、肩を落としていました。後悔先に立たずといわれるかもしれませんが、人生100年とすると、Aさんの場合はまだ30年以上残っています。気持ちの切り替えも必要でしょう。

三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
代表