親への感謝の気持ちとして、「仕送り」をしている人もいるでしょう。仕送りの負担は、若いころならそこまで大きく感じないかもしれません。しかし、役職定年を迎えたり子どもの教育費がかかったりするようになれば、無視できないものになっていきます。そこで今回は、年金と息子からの仕送りで暮らす岩本勝男さん(77歳・仮名)の事例とともに、仕送りをやめるタイミングと、親子の健全な「支え合い」の形について、南真理FPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
この先どうやって生きていけば…年金月10万円・元工場勤務の77歳独居男性、頼りにしていた息子から「仕送り終了」の宣告。これまでの送金に心から感謝するも、静かに忍び寄る「破綻の足音」【FPの助言】
「親への仕送りをしている」は少数派だが…子ども世帯に迫る負担の現実
厚生労働省の「令和元年国民生活基礎調査(世帯 全国編)」によると、親への仕送りをしている世帯は、5,178万世帯に対して、約2.4%にとどまっており、親に対して定期的に仕送りをしている世帯は決して多くないというのが現状です。
さらに、親への仕送りをしている年齢層で最も多いのは、50~59歳であり、働き盛りであると同時に、教育費や住宅ローンなど多くの支出を抱える世代に集中していることがわかります。また、仕送りの平均額については、月2~4万円が最も多いという結果が出ており、1世帯あたりの仕送り額の平均は月額5.4万円となっています。
これらのデータから、親への仕送りは一般的な習慣というよりも、限られた家庭で行われていることが見えてきます。そして、今回の勝男さん・義彦さんのケースのように、親が年金だけでは暮らしていけない場合、仕送りは「子どもの支え」というよりも「生活の一部」として必要になってしまう現実があるのです。
しかし一方で、仕送りを続ける子ども世帯の負担も決して小さくはありません。特に50代は、親への支援をしながら自分たちの老後資金を準備し、さらに自分たちの子どもの教育費も背負う「三重苦」に直面しやすい世代です。仕送りが感謝や思いやりから始まったとしても、長期化するなかで家計への圧迫や心身の負担を感じている家庭も少なくないかもしれません。