一般財団法人ロングステイ財団の調査によると、日本人の住みたい国は15年連続で「マレーシア」が第1位となっています。55歳の鈴木さん(仮名)も「マレーシアに移住したい」という長年の夢を叶えるべく、早期退職を決断。しかし、わずか数ヵ月で帰国するハメに……。いったいなにがあったのでしょうか。鈴木さんの事例をもとに、早期退職のワナと老後資産の上手な使い方をみていきましょう。牧野FP事務所合同会社の牧野寿和CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
よし、帰ろう…早期退職を決断した55歳元サラリーマン、通帳に記帳された「残高1億円」を見て“夢の海外移住”を決意→わずか半年で帰国。移住をやめたワケ【CFPの助言】
資金繰りに問題はないが…FPが武さんに行った「助言」
“おひとりさま”の武さんは、両親とともに東京近郊の実家に住んでいます。実家は借家で、両親が亡くなったあとは大家に返す約束だそうです。
現在55歳の武さんが今後も無職の場合、老齢厚生年金を受給する65歳までは、貯蓄を取り崩して生活する必要があります。しかし、資産が十分にある武さんは、大きな贅沢をすることがなければ、問題なく生活できそうです。
また65歳以降、武さんの年金受給見込額は月16万円。普段から節約して暮らしていた武さんは、貯金を取り崩すことなく年金収入の範囲内で生活できる見込みです。
「資金面については問題ありません。ただし高齢になると、賃貸住宅は貸してもらえない傾向にあるため、日本で生活する場合は住宅の購入をおすすめします」
「これまではお金を貯めることに専念してきたのでしょうが、今後は長い“第2の人生”が始まります。せっかくですから、武さんのこれまでの努力が報われるような、有意義な使い道を考えてみてはいかがでしょうか」
武さんは「そうですね。なんだか背中を押された気がします。家に帰って、よく考えてみます」と言い、事務所をあとにしました。
武さんの「その後」
それから数ヵ月後、武さんは再び筆者の事務所を訪れました。
武さんの話によると、FPの助言を受けて大家と話し合い、実家の土地建物ともに武さんが買い取ったそうです。そして、「新たな夢」として、いままでの業務経験を活かした貿易事務所を起業。かつての同僚にも声をかけ、セカンドライフのスタートを切ったといいます。
「目標は将来クアラルンプールにも事務所を持つことです」
そう話す武さんの表情は希望に満ちていました。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員