増加傾向が続く「熟年離婚」

三島さん夫婦のような長年連れ添った中高年夫婦、婚姻期間が20年以上で、多くが50歳代以上の夫婦の離婚を「熟年離婚」と呼んでおり、年々増加傾向にあります。

厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によると、離婚件数自体は平成15年以降減少傾向が続いており、令和2年(2020年)は約19万千組でした。そのうち同居期間別の離婚件数を見ていくと、同居期間が20年以上の「熟年離婚」と呼ぶケースでは、昭和25年以降、一貫して増加しています。令和2年(2020年)時点では、離婚件数全体の約2割がこの熟年離婚に該当しています。

熟年離婚というと、「妻から夫に三下半を突きつける」というイメージがありますが、夫から妻に離婚を切り出すケースも当然あります。

離婚による財産の分割を行うための制度

長年家庭を支えてきた専業主婦にとって、離婚後の最大の不安は「お金」です。離婚後の資金源として重要なのが「財産分与」と「年金分割」です。婚姻期間中に築いた財産は、たとえ専業主婦であっても「財産分与」の対象となり、原則として2分の1ずつに分ける権利があります。

対象となる財産には、現金・預貯金、住宅、不動産、有価証券、保険の解約返戻金などが含まれます。離婚の時点で退職金の受け取り前であっても、受け取りが確実視される場合は退職金見込み額が分割対象となり得る場合もあります。

夫が会社員・公務員の場合には、婚姻期間中に夫が加入していた厚生年金の報酬比例部分を「年金分割制度」によって分けてもらえるよう請求が可能です。ただし、自身に年金の受給資格(原則10年以上の保険料納付)がなければ受給自体できない場合もあります。

年金分割により年金額がいくらになるかは年金事務所で試算が可能です。離婚前に年金事務所で分割見込額を確認しておくと、将来の生活設計が立てやすくなるでしょう。

熟年離婚の場合、すでに子どもが成長して独立していると、親権や養育費など子どもに関する条件よりも、婚姻期間が長い分、退職金を含む財産分与、年金分割など金銭に関する条件で揉めることが多い傾向があります。