「まさか同期の田中が...」40年の同僚が選んだ意外な退職時期

「長い間お疲れさまでした」

会社からの花束を受け取りながら、山田康二さん(仮名・65歳)は万感の思いでした。営業畑で40年余り。バブル期の好景気もリーマンショックの苦境も、同期の田中一雄さん(仮名・65歳)と乗り越えてきました。

山田さんの退職金は約2,180万円。自身の年金見込み額(加給年金含まず)は年約248万円。妻の恵子さん(62歳・パート勤務)と「これで老後も安心」と退職祝いの温泉旅行を計画していました。

しかし、山田さんには気になることがありました。田中さんが65歳の誕生日(2月23日)の約1ヵ月前、1月15日に退職していたのです。なぜ64歳11ヵ月で退職したのか。田中さんからは以前「少し早く退職する」と聞いていましたが、理由は「退職後に話す」と濁されていました。

退職の翌週、山田さんと田中さんは久しぶりの飲み会を開きました。40年の労をねぎらいつつ、山田さんが「あと1ヵ月頑張れなかったのか?」と冗談交じりに尋ねると、田中さんは真剣な表情でこう語りました。

退職を早めた理由と驚きの事実

「実は……妻の乳がんが見つかってさ。幸い回復中だけど、定期的な治療が通院が必要で、精神的にも支えたいと思ったんだ。フルタイムの仕事は難しくなるけれど、妻の体調を見ながら、短時間や在宅の仕事を探したいと考えて早めに退職したんだ」

田中さんは、退職後、ハローワークで求職登録を行い、短時間勤務やリモートワークの求人に応募するなど、積極的に求職活動を行っていました。

「退職金は100万円減って2,080万円になったけど、雇用保険の基本手当が最大で約111万円もらえるんだ。妻の通院に付き添いつつ、柔軟な働き方を模索できているのは大きいよ」と田中さんは言います。