“おねだり”はエスカレート…A夫婦の顔が曇っていく

その後Dくんが無事に中高一貫校に入学すると、Cさんはお礼もそこそこに「息子をどうしても有名難関私大の理系学部に入れたいから、進学塾代と家庭教師代を援助して欲しい」と言ってきました。

Aさんは悩みましたが、「これが最後だぞ」と言いながら言われるがまま1,000万円を追加で援助。

するとその後、Dくんが志望大に合格すると、今度は「大学の学費が思った以上だった。それに、息子が1人暮らしすることになって……。助けてほしい」と言って、さらに350万円を要求してきます。 

大学の出願から入学までにかかる費用は…

ここまで援助を続けて資産が枯渇してきたAさんは、さすがに自分たちの資産が心配になってきました。

本当にそんなに必要なのか調べてみると、Dくんのように私大の理系学部に下宿して通学する場合、受験から入学までにかかる費用は下記のとおりとなっています

※ 出所:全国大学生活協同組合連合会「2024年度保護者に聞く新入生調査」

・出願のための費用(受験料など):12万7,700円

・受験の宿泊交通費など(同伴者を含む):9万8,900円

・入学した大学への納付金(入学金、授業料、施設拡充費など):101万1,500円

・入学しなかった大学への納付金(後日返金分を除く):26万3,300円

・合格発表等の宿泊交通費など:5万3,500円

・入学式出席の費用(交通宿泊費、同伴者を含む):4万8,300円

・パソコン・教科書・電子辞書など教材購入費:24万5,000円

・下宿探しの費用(交通宿泊費、家賃敷金礼金、仲介手数料など):27万4,300円

・新生活用品の購入費用:30万9,300円

・その他の費用(引越し代など):31万0,900円
 

合計……274万2,700円

「こんなにお金がかかるのか……」

納得したAさんは、Cさんに「本当にこれが最後の最後だ」と念押しをして、500万円を生前贈与しました。これで、相続時精算課税の特別控除額2,500万円分すべてを贈与したことになります。

約6,000万円の資産は10年で「6分の1」に…顔面蒼白のA夫婦

A夫婦は貯金を、こうした子や孫への援助のほか、自宅のリノベーションや新車の購入費用など、自分たちの「理想の老後」のためにも使っていました。そのため、徐々に残高が減っていく認識はあったものの、気づけばかつて約6,000万円あった資産は1,000万円にまで目減り。愕然とするAさんです。

しかしCさんからは「大学を休学させて、Dを海外留学させてやりたいんだ」などと、相変わらず“援助してくれ”という圧力をかけてきます。

このままでは、介護施設に入るための費用や医療費など、もしものときの資金が足りなくなるかもしれません。しかし、息子の“おねだり攻勢”がいつやってくるかわからない……。

「息子の帰省に怯える日々」に我慢の限界を迎えたA夫婦は、誰かに話を聞いてもらいたいと、昔からの知り合いであるファイナンシャルプランナー(FP)の筆者のもとを訪れました。