高齢者の生活破綻は、もはや他人事ではない時代。特に、都心に不動産を持つ「一見富裕層」が、実は手元資金の枯渇に苦しむ貧困に陥るケースも少なくありません。75歳の平田真知子さん(仮名)もまた、100坪の家と月22万円の年金では固定資産税すら重く、友人への見栄もあり家計は火の車。この深刻な状況から抜け出す道はあるのでしょうか。「隠れ貧困」から脱却し、安心して暮らすための住まいを含めた対策について、CFPの松田聡子氏が解説します。
誰にも言えなくて…都内の100坪豪邸で暮らし、タクシー移動で豪華ランチを楽しむも、裏では「貯金わずか・生活に困窮」。年金月22万円・75歳女性が苦慮する「隠れ貧困」の実態【CFPの助言】
「大きすぎる家」から「心地よい暮らし」へ――住まいを活かした老後の経済再建策
平田さんのような「ハウスリッチ・キャッシュプア」状態から脱却するためには、まずは収入の範囲内で生活する習慣の確立が重要です。簡単な方法としては、短期間集中的に家計簿をつけてみて、自分のお金の使い方の傾向を把握するのがおすすめです。
見直しの例として、外食が多いのであれば、友人との集まりを自宅に招く形に変え、週1回は子どもの家で食事するといった工夫が考えられます。
しかし、収入内での生活を実現できたとしても、今後の介護費用や住宅修繕費を考えると、より抜本的な解決策が必要です。
老後の安心を掴む「次の一手」
その最も効果的な方法が、住まいの見直しです。
「持ち家を売却して、より小さな住居へ住み替える」という選択肢は、多くのメリットがあります。100坪の土地にある戸建てから、便利な駅近のマンションや郊外の小さな戸建てに移ると、固定資産税の負担は大幅に減少します。また、売却益を元手に老後の生活資金や介護費用に充てることができるでしょう。
「それでも長年住み慣れた家を手放すのは辛い」という方には、リバースモーゲージやリースバックも検討の余地があります。
リバースモーゲージは自宅を担保に老後資金を借り入れる方法で、住み続けながら現金を調達できますが、金利負担や審査の厳しさがネックです。一方、リースバックは自宅を売却後、賃借人として住み続ける方法で、まとまった資金を得られる利点がありますが、将来的に家賃が上昇するリスクもあります。
住み替え時の心理的ハードルを乗り越えるには、「物の整理から始める」のが効果的です。長年の思い出が詰まった家には不要なものも多く、断捨離を進めていくと住み替えへの心の準備ができるでしょう。
住まい選びでは「駅からの距離」「医療機関へのアクセス」「日常の買い物のしやすさ」などの生活の質につながる要素が大切です。
「大きすぎる家」から「心地よい暮らし」への転換は、平田さんのような「ハウスリッチ・キャッシュプア」状態の高齢者にとって、老後を豊かに生きるための大切な一歩となるでしょう。
松田聡子
CFP®