高齢者をターゲットにした特殊詐欺や投資詐欺が後を絶ちません。年金と夫の遺産で生活する宮本圭子さん(仮名・65歳)の“穏やかな日常”は、愛する娘が連れてきたひとりの男性によって“崩壊の危機”を迎えます。具体的な事例をもとに、投資詐欺の手口や注意すべきポイントをみていきましょう。辻本剛士CFPが解説します。※プライバシー配慮のため登場人物の情報は一部変更しています。
あなた、なにをされている方なの?…年金月13万円・貯金3,000万円の65歳女性、30歳のひとり娘が連れてきた「まさかの婚約相手」に“穏やかな老後”崩壊のピンチ【CFPが警告】
高齢者を狙った詐欺の実態
オレオレ詐欺や還付金詐欺といった特殊詐欺だけでなく、SNSを使った投資詐欺やロマンス詐欺など、年々、詐欺事件の手口は巧妙化し、複雑になっています。
なかでも注意が必要なのが、高齢者を狙った「投資詐欺」です。特に、ウソの「結婚話」を持ちかけて親の信頼を得たうえで、資産を狙う手口が増えているといいます。
“結婚相手”本人から金銭を奪うことを目的とするケースもありますが、結婚相手の親、つまり高齢者をターゲットにするケースも少なくありません。
そして、詐欺師の多くは職業を「投資家」と名乗ります。警視庁の特殊詐欺対策ページによれば、詐欺師が詐称した職業の約35%が投資家であることがわかります。
投資詐欺の典型的な手口は以下のとおりです。
1.婚活パーティーやマッチングアプリ、SNSなどで知り合う
2.好意を抱かせるように親密に接近する
3.「これくらいなら」と思える少額のお金を最初に要求する
4.「絶対に儲かる」「元本保証」「すぐに倍になる」などと甘い話を持ち出す
5.徐々に要求金額を吊り上げ、最終的に高額な金銭を引き出す
6.最終的には突然連絡が取れなくなり、姿を消す
最初は警戒心を和らげるために小額から始め、徐々に金銭を引き出していくのが特徴です。
資産を守るために必要な「経歴確認」と「ルールづくり」
こうした被害を防ぐためには、次の2つのポイントが重要です。
・経歴確認を行う
・金銭授受に関するルールをつくる
交際相手については、本人が話す職業や経歴を鵜呑みにせず、必要に応じて第三者機関で確認を取ることが大切です。たとえば、名刺や勤務先のホームページ、在籍証明などを求めるのも有効な手段です。「個人投資家」といった曖昧な職業を名乗る場合は、より慎重に対応する必要があります。
また、家族間では、以下のルールを明確に決めておくことが重要です。
・本人・親族を問わず、交際相手やその関係者への金銭の貸与・贈与は禁止する
・金銭支援を求められた場合は、必ず家族全員で協議することを義務づける
特に高齢の親世代はターゲットにされやすいため、日ごろから家族で情報を共有し、金銭の動きに異変があればすぐに察知できる体制を整えておくことが大切です。
「小額だから」「1度だけだから」といった油断が、大きな被害につながりかねません。最初から「金銭のやり取りは禁止」という原則を徹底し、家族全体で資産を守る意識を持ちましょう。
