イギリスの部屋は、モノが多くてもなぜかおしゃれ。その秘密は「足す」インテリアにあります。家具や布、アートを少しずつ加えることで、個性と居心地のよさを演出しているのです。今回は、そんなイギリス流インテリアの魅力を、インテリアデザイナー・飯沼朋子さんの著書『イギリス人の部屋はなぜ物が多くても素敵なのか』(飛鳥新社)より一部抜粋し、ご紹介します。
旅先で買った置き物、壁いっぱいのアート…日本では「ごちゃごちゃ」、イギリスでは「オシャレ」に見える理由
「フォーカルポイント」をつくるだけでもいい
特に部屋に「最初に視線が行く場所」がしっかりつくってあると、第一印象がグっとよくなり、すてきな部屋に見えます。
「最初に視線が行く場所」とは、玄関のドアを開けると見える正面の壁、リビングに入ったときに目が向かう場所、あるいはトイレに入った際の正面の壁などです。正面にかぎらず、目を引く美しいインテリアや飾りつけがあればそこに最初に目が行きます。これが、 「フォーカルポイント」です。
そして、モノがたくさんあるのに、ごちゃごちゃしている印象はなく「なんだかおしゃれ」な家もイギリスにはたくさんあります。いわゆる「外国っぽい」感じです。そのようなインテリアを目指したい人もいるでしょう。
その場合も、キャビネットの上の写真や置き物、壁いっぱいのアート、たくさんの色や柄の布製品など、もちろんたくさん「足して」います。ですが、ただモノを足しているのではなく、「視線が行く場所」をいくつもつくっていて、モノが多い中にもメリハリをつけているのです。
こういったアイテムは最初から計画的に置かれたものばかりではなく、時間が経つにつれ、少しずつ増えていくことがよくあります。
部屋に飾る写真がわかりやすい例です。
自分や家族の写真が時間と共に増えていき、目に入るたびに楽しかった思い出がよみがえってきてホッコリしますよね。「足す」ことにより、目と心を楽しませるアイテムを少しずつ増やしていくのはインテリアの楽しみの一つです。一つずつ足していくことでインテリアをつくり上げていく――。
「足す」とは、あなた、そして家族の歴史の積み重ねでもあります。
「引き算」の美学を持つ日本人
一方で、私たち日本人はどうしても引こう、引こうとしてしまいます。なぜなら、日本人は、文化的に引き算の美学を持つ民族だからです。
日本風の家屋には、柱やふすま、障子、畳などで縦横のラインがたくさん存在し、建った時点ですでにインテリアデザインが完成しています。
一方、イギリスなどヨーロッパ諸国の場合、家を建てた時点では、白い壁と白いドアしかない、のっぺらぼうの状態です。
だからこそ、家具や布製品で利便性や快適性を整え、壁の色や柄、インテリア小物などによって部屋を部屋らしくつくっていく必要があります。「足し算」のインテリアが発展した理由です。次のイラストを見れば、インテリアデザインのスタートが違うことは一目瞭然ですよね。
飯沼朋子
株式会社デコール東京 代表取締役
建築士、インテリアデザイナー、アートアドバイザー