洋風の部屋は真っ白いキャンパス

この記事を読んでいる多くの人は、和室がほとんどない、洋風の暮らしをしていると思います。

洋風の部屋は、絵画にたとえるなら、真っ白なキャンバスです。どんなモノや色を足していくかは住む人次第。すべてをあなた色に染められます。イギリス人は、そこにワクワクした楽しさを感じています。

ところが、私たち日本人は、「引き算」を美学としてきたため、好きにインテリアをデザインしていいよ、と言われても、「どこ」に「何」を「どうやって」配置し、「何」を「どう」飾ったらいいのか迷ってしまうのです。そして、部屋をすっきりさせることを考えてしまいがちです。

実際、多くの日本人は「片づけさえすればすてきな部屋になるはず」と思いがちですが、実はそれだけではおしゃれで居心地のいい部屋にはなりません。インテリアがうまくいかないのは、洋風の暮らしをしているのに、日本の「引き算」の美学を実践しようとしているからなのです。

そうではなく、「インテリアは足すことでうまくいく」と意識してみてください。モノを足すほどに、使い勝手がよくなったり、あなたらしさが際立って魅力的な部屋になっていきます。

日本人には日本人らしい美的センスがあります。だからこそ、「足すこと」で自分のセンスを活かし、もっと豊かなインテリア空間をつくり出せるのです

「足す」ことですべてのインテリアの悩みは解決する

実際、「足す」ことで解決できるインテリアの悩みはたくさんあります。いくつかの事例をご紹介してみましょう。

悩み1 :モノが多くてちらかっている

「モノが多いから部屋がちらかってしまう。でも、片づけは面倒……」
最も多い悩みかもしれません。やはり、足すと解決できることがあります。

【解決方法1】 視線が集まる場所を足す

「視線が行く場所(フォーカルポイント)」をつくることによって、ちらかっているモノに目線が行かないようにすることができます。

自分が持っているモノの中からお気に入りを見つけてインテリア用品にすれば、個性的で魅力的な部屋に仕上げるチャンスかもしれません。

【解決方法2】 収納家具を足す

モノが多くてちらかってしまう部屋は、そもそも収納家具が足りていないこともあります。「部屋が狭くなるから家具を置きたくない」と考えてしまう「引き算」の発想が、収納家具を足すのをためらわせているのかもしれません。

高価な家具を買う必要はありません。もし押し入れやクローゼットに眠っている家具があれば、それを活用するのも手です。たとえば、高さ80センチくらいのチェストや収納家具です。同時にその上をいろいろなモノで「飾る」舞台として考えます。たとえば、アートやミラーなど大きめのモノを足すと映えます。さらに、ランプ、花や観葉植物、本、写真、置き物など足すモノは自由です。

出所:『イギリス人の部屋はなぜ物が多くても素敵なのか』(飛鳥新社)
出所:『イギリス人の部屋はなぜ物が多くても素敵なのか』(飛鳥新社)

家具を足すことで、収納の実用面も見た目も整えることができ、心地よい暮らしにつながります。

【解決方法3】 壁に色や柄を足す

ほとんどの部屋は白っぽい壁紙が多いと思うのですが、1面だけでも赤、青、緑、濃いグレーなどはっきりした色や柄ものの壁紙にすると、その色柄の世界観に空間全体が包まれ、ちらかったモノが目立ちにくくなります。

柄を足す場合は壁紙を張り替え、色だけ変える場合は上からペンキを塗る方法もあります。子ども部屋にもおすすめです。

悩み2:部屋が狭い

「部屋が狭いから家具は増やせない」

気持ちはわかりますが、ここも「足し算」の発想で考えてみましょう。広い部屋はその分、多くの家具が必要ですが、狭い空間では少しの工夫でコストをおさえつつ、魅力的なインテリアをつくり上げることができます。

【解決方法4】 1人がけのイスを足す

部屋が狭くて大きなソファが置けない場合は、1人がけのソファかイスを置きましょう。1人がけのイスだけでも十分ですが、そこにクッションやフロアランプ、アートなどを追加すると、部屋がよりイキイキとしてきます。特にフロアランプやアートは高さがあるため、空間に立体感を与えてくれます。

出所:『イギリス人の部屋はなぜ物が多くても素敵なのか』(飛鳥新社)

日本人には床に座る習慣もありますが、実は何もない床に直接座るよりも、ソファやイスを置いて座るほうが狭さが気にならなくなります。また、アートやランプ、カーテンなど高さがあるアイテムを組み合わせると、空間が立体的になり、より豊かで魅力的に感じられます。

【解決方法5】 壁に個性を足す

狭い空間だからこそ、個性的にすることで部屋を魅力的にできます。

解決方法3のように色を足したり、壁にアートなどインテリア小物を足すことで、狭い空間の邪魔をすることなく独自のスタイルにすることができます。

出所:『イギリス人の部屋はなぜ物が多くても素敵なのか』(飛鳥新社)

壁をはっきりした色にすると世界観がその色になり、ちらかったモノがそれほど気にならなくなる。

出所:『イギリス人の部屋はなぜ物が多くても素敵なのか』(飛鳥新社)

思いきったデザインやカラーの使い方は、広い部屋より狭い部屋のほうが挑戦しやすいものです。狭くても大好きな部屋になるように整えましょう。

飯沼朋子
株式会社デコール東京 代表取締役
建築士、インテリアデザイナー、アートアドバイザー