老後の不安、インフレ、住宅ローン……現代人はさまざまなお金の悩みを抱えています。将来に備えて資産形成を始めたいけれど、なにから始めたらいいかわからない。そんな人は少なくないでしょう。本記事では、元国家公務員で1級ファイナンシャル・プランニング技能士の川淵ゆかりさんが、自身の失敗談も交えながら、賢い資産形成の方法をわかりやすく解説します。
20代独身で住宅ローンを背負った元国家公務員…「資産形成・はじめの一歩」での大失敗から学んだこと (※画像はイメージです/PIXTA)

30代までにやっておくべき投資とは?

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

とはいえ、若いうちにしかできない投資もあります。それは、「自分への投資」です。大転職時代ともいわれるようになった昨今では、やりたい仕事を勝ち取るために自分の強みをどのようにアピールするかが重要になってきています。

 

私の場合は「資格」が強みになっています。学生のころは事務職を希望していましたが、一般事務ではなく専門の知識のある経理事務を目標としたときは簿記の学習を、コンピュータ関連の仕事をしたいと思ったときは国家試験の合格を目指し勉強しました。

 

国家公務員を退職後、システムエンジニアとして働いていた際、大企業の会計システムや都市銀行システムを担当したことをきっかけに、日商簿記1級、ファイナンシャルプランナー、高度情報処理技術者試験に続けて合格。仕事をしながら資格試験の学習を続けるのはかなり大変でした。ですが、このときの頑張りが現在の自分を支えています。

 

私のように資格を強みにする場合、やはり勉強ですから若いうちからチャレンジしたほうがよいでしょう。40代や50代になっていきなり勉強を始めても、よほどの人でないと頭がついていかないと思います。

 

さらに、資格を取るだけで仕事につながるとは限りません。当然ながら「経験」が問われます。試験に合格したらそれをもとに経験を積む、そしてその経験をもとにさらに上位の試験に挑む、それが私の30代までのやり方でした。

 

すでに70代前半の男性の4割以上が働く時代になっています。インフレになった現在、資産形成だけではなく、働いて収入を得続けることはマネープラン上、重要になってきます。どんなに資産があっても、モノの価値が上がることでお金の価値が下がってしまえば将来に不安を感じるでしょう。定年後も仕事を続けることは、今後多くの人にとって他人事ではありません。

 

将来、どのような仕事をするかも考えて、いまから自分の強みを探してください。

※内閣府「令和6年版 高齢社会白書

資産運用で重要なこと…不確実性の時代、老後資金を作るには?

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

資産運用には、

 

  1. まとまったお金を運用する方法
  2. 毎月コツコツ積み立てていく方法

 

の2つがあります。私は主にコツコツ積み立てていく派です。ここで積み立ての注意点をお話ししましょう。

 

日本の年金は、現役世代が支払っている保険料を年金受給者に支払っている「賦課方式」となっています。そのため現役世代が人口減少で減り続けるこれからは、給付額が減っていくことを防ぐことはできません。

 

これにより、今後は新NISAやiDeCo等で現役世代のうちに積み立てて将来受け取る「積立方式」との併用が非常に重要です。将来、賦課方式+積立方式で老後の生活を支えていくことになるとすれば、「周りもやっているからなんとなく新NISAで積み立てている」といった方々は非常に危険になります。

 

そこで「いつまでにいくら作るか」というように、必ず目標額を設定するようにします。目標額を設定すれば、目標額に必要な毎月の積立額や年利などがわかります。そうすると、どんな運用商品を利用すればいいかも見えてくるでしょう。

 

もちろん、株価は変動しますので、結果は必ずしも目標額とは違ってくると思いますが、目標も立てずになんとなく積み立てを始めてしまうと、途中でやめてしまいがちです。今後の日本では賦課方式の公的年金だけには頼れないことを認識し、将来の生活のためだと思って継続するようにしましょう。

 

日本はインフレに転じ、日々の暮らしが物価高に悩まされるようになってきましたが、モノやサービスの値段が上がってくると、実質的にお金の価値は下がってきます。

 

たとえば、毎年2%ずつ物価が上昇していくと、36年後には約2倍の価格になる計算です。ですが、36年後に公的年金の額が2倍になることはまずありません。定期預金の金利もまだまだ低いので、ある程度はリスクを取って投資運用していかないとインフレに負けてしまうことになります。

 

選択肢を新NISAやiDeCoに限る必要はありません。自分にあった運用で将来の資金作りに励んでください。