3.11からもう14年が経過しましたが、法医学者の高木徹也氏は、当時遺体の検案した際に、手荷物として多額の現金や貴重品を持ち運んでいた人がいたことに気づいたそうです。本記事では、高木氏による著書『こんなことで、死にたくなかった:法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)より一部抜粋・編集して、未曾有の大地震を通して学ぶことのできる教訓について解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
現金1,000万円を持っていた高齢者のご遺体も…大地震発生時に死のリスクを高める「オオカミ少年」現象とは【ドラマ『ガリレオ』シリーズ監修の法医学者が解説】
死のリスクを高める「オオカミ少年」現象
調べてみると、東日本大震災の2日前である3月9日に、宮城県沖でマグニチュード7.3、最大震度5弱の地震があり、津波注意報も発令されて実際に岩手県で60センチメートルの津波が観測されていました。
さらに、翌日の10日にも、宮城県沖でマグニチュード6.8の地震が発生していました。後から考えれば、これらは大地震の前震だったわけですが、このせいで避難慣れしてしまっていた可能性があるのです。
イソップ寓話『嘘をつく子供』に出てくるオオカミ少年と同じで、前震の際に「津波が来るぞ」と言われたものの、実際にはそれほど大きなものではなかったことが、心に油断を生み、本震発生の際もそれほど慌てなかったのではないでしょうか。
また、前震で避難を経験していた人が、念のためタンス貯金など多額の現金をまとめていたため、本震発生の際にそれほど切迫感もなく、それらを取りに戻ったことで逃げ遅れたのかもしれません。
津波は、高エネルギーを有する凶器です。高速道路を走っている大型トラックや新幹線にはねられるくらいの損傷を被ります。
人体では到底耐えられない高エネルギーからは、「遠ざかること」が一番の防御策。避難の指示があった場合には、とにかく急いで避難することが第一です。
【このような危険を避けるには……】
・避難訓練を定期的に行なう。
・津波で高エネルギー外傷を被ることを理解する。・貯金や貴重品などを取りに戻らず、速やかに避難する。
高木徹也
法医学者