退職金がゼロに…孫のための出費の数々

Aさんは結局、孫の誕生によりせっかく受け取った退職金を使い切ってしまいました。なお、孫が誕生する前のAさんの家計状況は以下のとおりです。

・現在の月収:手取り28万円

・63歳から厚生年金を月4万円受給予定(65歳以降は月約10万円)

・預貯金:1,200万円(退職金として受け取った企業型確定拠出年金500万円を含む、夫の年金と退職金は夫が管理しているため不明)

一方、Aさんが娘と孫のために使ったお金には以下のようなものがありました。

【初孫の出産前】ミニバンの購入費用、チャイルドシートの購入費用

【初孫の出産後】お祝い、育児グッズの購入

【毎週末】飛行機の往復運賃、電車運賃などの交通費

【滞在中】食費や手土産、孫へのプレゼント

Aさんが使ったお金の中で、最も大きかったのがミニバンの購入費用で約300万円。Aさんが住んでいた地域では車での移動が当たり前です。孫はまだ増えるかもしれないし、車で出かけられないことで娘たちの帰省の足が遠のいてしまうのは困る!と考え、孫が生まれる前にコンパクトなミニバンを購入したのでした。

その後は、車を買ったらチャイルドシートも。出産後はお祝いと洋服やベビーベッドなどの育児グッズ、孫のための環境整備のための布団の新調や空気清浄機の購入などなど。出費額は積み重なり、ついに半年間の毎週末の滞在をとどめに、出費額は退職金と同額の約500万円に達したのでした。

「初孫フィーバー」の落とし穴

初孫誕生のときには以下のような「落とし穴」に陥りやすくなります。

●短期的思考

●「初孫のための」無意識の体験偏重思考

これらの落とし穴に陥ると、財布のひもは緩みやすくなります。お金を上手に使うためには長い時間軸で考えることが重要ですが、初孫が生まれた嬉しさに気分が盛り上がると、先の考えは消えてしまい短期的な思考に陥りがちです。

また、初孫のときはとくに「孫のためのお買い物を楽しみたい」という体験価値を過大評価したお買い物行動も目立ちます。本当は買う必要のないものでも、「孫のために買う」という体験を無意識に大きく評価してしまうのです。

これらに加え、最近は物価高の落とし穴もあります。物価が上がっている流れのなかでは、1つひとつの費用が少しずつ増えることによって、全体での費用が大きく増える可能性があります。

Aさんは悩みましたが、夫に退職金を使い切ってしまったことを打ち明けました。はじめは怒った夫でしたが、「考えなしだったわ……。でもつい、嬉しくて……」というAさんの言葉に根負けしたようです。「もちろん俺だって嬉しいよ。俺ももっと初めから協力すればよかったよ。こんなじぃじばぁばで孫にもすまないな……。もっと一緒に孫育てするよ。お金のことは一緒に考えよう」と反省していました。

では、Aさん夫婦のようにあとになって後悔しないためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか?