人生の大きな節目である「定年」。「第二の人生」がスタートするタイミングですが、年収1,100万円で都内に暮らすエリートサラリーマンのAさんは、約30年の社会人生活を振り返り、ひどく後悔。FPに相談したところ、「年金受給開始」を待たずに最悪の未来が待っていることが判明しました。事例をもとに、資産形成のコツと注意点についてみていきましょう。

息子よ、俺みたいになるなよ…年収1,100万円の59歳・定年直前サラリーマン、この春から社会人の24歳長男に伝えた「一生涯の後悔」【CFPが解説】
「プライド」と「理想の生活」で身動きの取れないAさん
こうしたなか、Aさんは夫婦の生活費のほか、息子の結婚費用や自宅をバリアフリー化するリフォーム費用、現在80代後半の両親の介護費などを心配していました。
まず両親の介護費用については、両親が自分たちであらかじめ準備している可能性もあります。したがって、両親と率直に話し合ったうえで、介護保険等を活用しつつ不足分があれば対応すれば良いでしょう。
また、Aさんは自宅を購入後、数年に1度は工務店に言われるがまま、100万円単位で修繕工事費用を支払っていました。バリアフリー化でリフォームが必要になった場合には、いまの工務店以外にも複数見積もりを取ることも検討すべきです。
A家の最優先事項
「バブル時代の感覚が抜けず、欲しいものはすぐに手に入れるというのが習慣になっていたんです。まとまったお金を一気に使うのも快感で……」
Aさんはこう言うものの、現実問題として収入を得なければ、A家の今後の家計は成り立ちません。Aさんが現在勤める会社では、希望すれば60歳の定年後も再雇用で働くことが可能です。
「部下の下で働くのはプライドが許さない」と頑固なAさんですが、詳しく話を聞くとこれまでのAさんの業績や勤務態度から、D社以外にも再雇用の誘いは数社あるそうです。
しかし「どの会社の給与条件もいまより半分以下だし、ボーナスもない。いまひとつ乗り気になれなくて……」とのこと。しかしAさんの現状では、そんな悠長なことを言っている場合ではありません。
また、生活費に関しては、極端に節約してもすぐにリバウンドすることは目に見えていますから、 “衝動買い”を控え、ムダな固定費を見直すことで、なんとか月80万円から月50万円に抑えます。
さらに、これから20年かけて毎月1,000円ずつ節約していけば、80歳からは月30万円での生活も可能になる計算です。
根気強く説得したところ、妻Bさんの後押しもありAさんは筆者の提案を受け入れてくれました。
その後しばらくしてAさんの再就職先も決まり、またBさんも「自宅でひとりじっとしていても退屈だ」とパート勤務を開始。数年後の破産はなんとか免れそうです。