人生の大きな節目である「定年」。「第二の人生」がスタートするタイミングですが、年収1,100万円で都内に暮らすエリートサラリーマンのAさんは、約30年の社会人生活を振り返り、ひどく後悔。FPに相談したところ、「年金受給開始」を待たずに最悪の未来が待っていることが判明しました。事例をもとに、資産形成のコツと注意点についてみていきましょう。

息子よ、俺みたいになるなよ…年収1,100万円の59歳・定年直前サラリーマン、この春から社会人の24歳長男に伝えた「一生涯の後悔」【CFPが解説】
ねんきん定期便の内容に驚くも、まだ楽観的なAさんだったが…
45歳の時、封筒で届いた「ねんきん定期便」を確認したAさん。65歳からの年金受給見込額があまりに低く焦ったそうですが、先輩から聞いた退職金額が十分な額だったことから「まあ、なんとかなるだろう」と漠然と考えていました。もちろん、老後資金の準備などしているはずがありません。
そしていつの間にか59歳となり、定年目前に。周囲と老後のお金や暮らしについて話すなかで、ようやく危機感を抱き始めました。
住宅ローンは完済しているものの、息子の結婚資金、自宅のリフォーム費用、さらには両親の介護など、今後起こりうるライフイベントを考えると、わずかな貯蓄と退職金だけではこころもとありません。
これまで長いあいだ目を背けてきた「老後生活」を直視するタイミングが来たのです。
しかし、なにもせぬままこの歳になって、いまさらできる対策などあるのか? 途方に暮れたAさんは、夫婦でファイナンシャルプランナーのもとに相談に訪れました。
このままだと、年金受給開始を待たず「老後破産」に
Aさんからこれまでの生活といまの悩みについて聞いた筆者は、まずA家の今後の主な収入について書き出してもらうことにしました。
<A夫妻の今後の収入>
・59歳……給与年収1,100万円
・60歳……退職金1,500万円(退職金)+企業年金月6万5,000円(~75歳まで)
・65~69歳……Aさんの老齢厚生年金月22万6,300円+企業年金=月29万1,300円
・70~74歳……夫婦の老齢厚生年金月27万2,900円+企業年金=月33万7,900円
・75歳以降……夫婦の老齢厚生年金月27万2,900円
定年後は働かない方針だというAさん。そうなると定年後、65歳の年金受給開始までは退職金1,500万円と企業年金(60歳から15年間月6万5,000円支給)、それに貯蓄200万円で生活することになります。
また、これまで厚生年金保険料や健康保険料、住民税は給与から天引きされて「所得税」も源泉徴収されていました。しかし退職後は、夫婦の国民健康保険料やBさんの国民年金保険料といった非消費支出(税金や社会保険料)も、自身で納めなくてはなりません。
A家の現在の支出額は月80万円ほどで、老後も現在の生活水準をできる限りキープしたいといいます。しかし、この80万円に国民健康保険料やBさんの国民年金保険料といった非消費支出(税金や社会保険料)を足すと、退職の翌年は年間約200万円、その後は年間45万円程度の納付が必要です。
A家はシミュレーションをするまでもなく、Aさんの65歳の年金受給を待たずに破産の危機にありました。