年を取ると若いころに抱えていた願望に追い立てられることがなくなり、時間の流れが変化します。明治大学教授の齋藤孝氏は、老後において大切なのは、長いスパンで物事をポジティブに楽しむこと。いわば「退屈に耐えられる力」が重要なのだと言います。齋藤氏による著書『60代からの知力の保ち方』(KADOKAWA)より一部抜粋・編集して詳しくご紹介いたします。

(※写真はイメージです/PIXTA)
時間があること=怠惰ではない…セカンドライフを充実させる「退屈力」というキーワード【明治大学教授・齋藤孝氏が解説】
小学生の自分も、今60歳である自分も同じ…「命の持続感」
一度引退したスポーツ選手が復帰すると、楽しそうにプレイする姿を見せてくれることがあります。例えば野球選手の川﨑宗則さんは、日本のプロ野球やアメリカのメジャーリーグで活躍し、いったん引退しましたが、その後独立リーグなどで、選手として復帰しました。
川﨑さんが、引退する選手へのはなむけの言葉として、「引退って、あくまでも野球のプレーを辞めただけ。これから幸せな人生があるわけですよ」(Number Web 2020年12月3日)と言っていました。変化を前向きに楽しむ心構えです。
小林秀雄は、著書『私の人生観』の中で、「命の持続感」という言葉を使っています。
「今日まで自分が生きて来たことについて、その掛け替えのない命の持続感というものを持て」
小学生の自分も、今60歳である自分も同じ、先人から継いだ生命の持続感がある。シェイクスピアはこう書いています。
「この世はすべて舞台。男も女もみな役者に過ぎぬ。退場があって、登場があって、一人が自分の出番にいろいろな役を演じる」(『新訳 お気に召すまま』 河合祥一郎訳 角川文庫)
自分を引いたところから見る目線を持つことも、経験値のなせる業です。
齋藤 孝
明治大学文学部教授