小学生の自分も、今60歳である自分も同じ…「命の持続感」

一度引退したスポーツ選手が復帰すると、楽しそうにプレイする姿を見せてくれることがあります。例えば野球選手の川﨑宗則さんは、日本のプロ野球やアメリカのメジャーリーグで活躍し、いったん引退しましたが、その後独立リーグなどで、選手として復帰しました。

川﨑さんが、引退する選手へのはなむけの言葉として、「引退って、あくまでも野球のプレーを辞めただけ。これから幸せな人生があるわけですよ」(Number Web 2020年12月3日)と言っていました。変化を前向きに楽しむ心構えです。

小林秀雄は、著書『私の人生観』の中で、「命の持続感」という言葉を使っています。

「今日まで自分が生きて来たことについて、その掛け替えのない命の持続感というものを持て」

小学生の自分も、今60歳である自分も同じ、先人から継いだ生命の持続感がある。シェイクスピアはこう書いています。

「この世はすべて舞台。男も女もみな役者に過ぎぬ。退場があって、登場があって、一人が自分の出番にいろいろな役を演じる」(『新訳 お気に召すまま』 河合祥一郎訳 角川文庫)

自分を引いたところから見る目線を持つことも、経験値のなせる業です。

齋藤 孝
明治大学文学部教授