子どもや孫に対する「住宅購入」のための贈与は1,000万円まで非課税となります。定年後にまとまった退職金が手に入ったAさんは、マイホーム購入を相談してきた息子に「1,000万円の贈与」を約束。しかし、Aさんはすぐにその約束を撤回しました。いったいなにがあったのか、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
父さん、約束が違うじゃないか…〈年金月27万円・貯金3,500万円〉の60代夫婦、38歳長男への「住宅購入資金1,000万円」贈与を宣言→すぐに撤回したワケ【CFPの助言】
祝いの席とはいえ…Aさんが妻から叱られたワケ
一方のAさんは、定年祝いのあと妻のBさんにこっぴどく叱られていたのでした。
「お父さん、援助はいいけれど、1,000万円ってバカじゃないの? 頭を冷やして、金額はまた今度、改めて話しましょう」
それからというもの、A夫婦は贈与の「ぞ」の字も出さずに黙っていました。
しかし、そんなA夫婦の態度をよそに、Cさんたちは毎週のように実家を訪れます。挙句の果てには「いま不動産業者と話している物件がかなり良くてさ……。ぶっちゃけ、父さんたちって資産はどのくらいあるの? もう少し援助額を増やしてもらえないかな?」とまで聞いてくる始末です。
「結婚するまでは、お金の無心をするような子じゃなかったのに……嫁に言わされているのかもしれないな。Cがかわいそうだ」
A夫婦は嘆きます。
「なにを買うにしても値段が上がっているし、Cにもお金を渡すことになると、今後の生活は大丈夫なのだろうか」
不安になったA夫婦は、住宅購入資金を息子に贈与したあとも老後の生活に問題はないか、FPに相談することにしました。
C夫婦の住宅購入計画は妥当か?
A夫婦の話によると、Cさんたちが気に入った住宅は、諸経費などを除いて8,000万円の新築戸建て住宅だそうです。Aさんからの1,000万円の贈与を頭金にして、残りの7,000万円を借り入れ、30年の住宅ローンを組んで返済しようと考えているといいます。
国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査報告書」によると、初めてマイホームを購入した年齢と住宅の種類は下記のようになっています。
<初めて住宅を取得した世帯の年齢>
■注文住宅……30代:46.0%、40代:24.2%、20代:13.4%(平均年齢40.1歳)
■分譲戸建住宅……30代:51.4%、40代:24.5%、20代:15.8%(平均年齢36.6歳)
■分譲集合住宅(マンション)……30代:51.0%、40代:26.2%、50代:11.4%(平均年齢39.9歳)
■既存(中古)戸建住宅……30代:36.4%、40代:35.5%、50代:12.3%(平均年齢43.1歳)
■既存(中古)集合住宅……30代:39.5%、40代:27.6%、60代以上:14.9%(平均年齢44.2歳)
<子育て世代※の購入資金、()内は子育て世帯の割合
■注文住宅……5,867万円(54.6%)
■分譲戸建住宅……4,452万円(66.7%)
■分譲集合住宅(マンション)……4,923 万円(39.9%)
■既存(中古)戸建住宅……3,532万円(43.8%)
■既存(中古)集合住宅……3,217万円(37.4%)
※ 19歳未満の子どもがいる世帯
上記を見ると、Cさんが購入希望の物件は平均値よりも高額です。購入希望の物件が都内であるためやむを得ない部分もありますが、ローンが滞りなく返済できなければそもそも買うべきではないでしょう。