定年退職者の半数以上が70歳まで仕事をするようになった現在、QOLの観点から、住宅ローン完済の優先順位はどんどん低くなっていっているかもしれません。大塚寿氏による著書『会社人生「55歳の壁」突破策』(かや書房)では、住宅ローンをいつ完済するか?を含む、50代以降のマネープランについて詳しく解説しています。本連載では一部を抜粋・再編集し紹介します。

退職金→〈住宅ローンの繰り上げ完済〉にちょっと待った!65歳からの人生が変わる、マネー戦略【70~74歳の3人に1人が働く現代日本で】
私の住宅ローン完済は70歳の予定
かく言う私も、住宅ローンの完済は70歳の予定です。最初は積極的に繰り上げ返済をして60歳に完済させようとしていましたが、期せずして息子が私立の医学部に進学してしまったので、繰り上げ返済の原資を学費に回さざるを得なかったのが正直なところです。
その時の学資ローンより住宅ローンの金利のほうが安かったので、そうしたまでですが、低金利の恩恵に預かるのも悪くないと、気がつきました。
息子は無事に卒業して、高額な学費からは解放されましたが、娘の学費、近々予定しているリフォームやクルマの買い替えなどは貯金から捻出して、QOLの観点から繰り上げ返済の優先順位は上げないように考えています。
確かに、65歳で完全にリタイアしてしまうなら、それまでに住宅ローンは完済しておいたほうが精神的にもいいのでしょうが、70歳までとか、75歳まで、はたまた生涯現役で仕事をする予定であれば、住宅ローンを完済するより、よりQOLの向上を優先させたお金の使い方でいいのではないでしょうか。
約3分の1の人が75歳まで働いている!
2022年の総務省の「労働力調査」によれば、60歳以上の就業率は
60~64歳 73%
65~69歳 51%
70~74歳 34%
となっています。
何と、半数以上の人たちが70歳まで働いているということです。
さらには約3分の1の人が75歳まで働いているというのも驚きですが、それぞれの数字は今後も増え続けるに違いありません。
この数字、「年金だけでは生活できないので、仕方なく働いている」消極派と、「社会の一員として社会とつながっていたいし、より豊かな生活のために」という積極派の比率は、どの程度なのでしょうか。
媒体の読者を増やすニュース材料としては前者が注目されがちですが、周りの諸先輩は後者ばかりです。
65歳以降も仕事をする予定なら、住宅ローンの完済などは後回しにして、一度しかない人生を楽しみましょう。
大塚 寿
エマメイコーポレーション代表取締役