“超絶ブラック労働”の末に受け取った給与額

68秋洋丸の給料は合計21万4,540円です。船主預かり金4万2,908円、入港費5,000円、船員貸付金10万円、控除額は合計で14万7,908円、今回の差引支給額は6万6,632円。

また、2分金は1航海4万2,908円、船員保険料2万3,980円、組合費2,000円、源泉徴収税5,720円、控除額合計3万1,700円、差引支給額は1万1,208円。

出典:『借金を返すためにマグロ漁船に乗っていました』(彩図社)より抜粋
[画像]68秋洋丸の給与明細 出典:『借金を返すためにマグロ漁船に乗っていました』(彩図社)より抜粋

マグロ漁船員には労働基準法ではなく、船員法という別の法律が適用されます。それゆえ、超絶ブラック労働を毎日させられることになります。

揚げ縄終了2時間前くらいに、投縄の当番が先に風呂に入って寝ます。揚げ縄が終わると起こされて、すぐに投縄です。投縄まで2時間くらい寝られるというわけです。それから投縄を4~5時間くらいやって、3時間くらい寝ます。その後12~20時間続く揚げ縄が始まります。

投縄があるときの睡眠時間は合計5時間くらいで、そうでないときは7~8時間寝られます。飯は日に4回、15分くらいで食べて交代です。タバコを吸う暇もないので、1本くわえてもう1本を耳に挟んでオモテに出てきます。休みに関しては、船頭が休みと言うまで基本的にありません。こんな労働環境で働かされるというのがマグロ漁船の実態です。

マグロ漁船は「更生」に適した場所!?

陸の仕事であれば真面目に仕事をしない人なんて腐るほどいると思いますが、マグロ漁船にはそういった船員は一人もいません。見たことがない。超絶ブラック労働な上に、海に落ちて波に流されたら一巻の終わりという過酷な環境に置かれています。たとえ不真面目な人がいたとしてもみんなシャキッと目が覚めて、マグロとの格闘に熱中します。そういう意味ではある意味、更生に適した場所でもあるのかなと思います。

陸に上がって大金を手にして豪遊したあげく、ヤクザや闇金からお金を借りてしまい、借金返済のために再びマグロ漁船に乗る……なんていう人もいるそうです。

私が肌感覚で感じたところからすると、こうした構図はかなりリアルな話だと思います。ヤクザの人たちもそれは想定内なので、入船の際に迎えに来ていたりするのでしょう。

借金返済のためにマグロ漁船に乗るというのは都市伝説だとよく言われますが、確かにそういった人はあまりいないのかもしれません。私が親の借金返済のために乗ったのは確かですが。

菊地 誠壱
元マグロ漁船員/Youtuber