千葉県の閑静な住宅街で一人暮らしをしていた75歳の母。その突然の訃報を受け、中国・上海から急遽帰国した50歳の息子を待っていたのは、認知症の兆候を示す散乱した部屋と、整理されないまま残された母の人生だったのです。今回の事例では、増加する高齢者単身世帯が直面する「生前整理」の現実と、残された家族の苦悩について、FPの三原由紀氏が解説します。
中国から急遽帰国した50歳息子、絶句。年金15万円・75歳母の急死で3年ぶりに訪れた懐かしの実家。その玄関奥に広がる「想像を絶する有様」【FPの助言】
遺品整理の現実と生前整理の重要性
四十九日の法要を終え、アキラさんは、散乱した遺品の整理に着手しましたが、何から手をつければよいのか途方に暮れました。
そこで、遺品整理の専門業者に相談することにしました。業者の見積もりによると、4LDKの一軒家の遺品整理費用は約70万円、ただし庭の物置は中身を確認してからとのこと。さらに、特殊清掃や害虫駆除などの追加作業が必要な場合は、20万円ほど上乗せされる可能性があるといいます。
一般社団法人終活協議会による生前整理に関する意識調査(2023年)によると、興味深いことに生前整理について考えたことがある人は62.2%と過半数を超えているにもかかわらず、実際に重要な書類などを家族が見てもわかるように整理できている人は38.0%にとどまっています。
この数字は、「考える」と「実行する」の間にある大きな隔たりを示しています。最終的に遺品整理に費やした費用は100万円ほど。物置になぜか冷蔵庫やエアコンがあったことが高額になってしまったそうです。生前から整理を行っていればこのような事態にはならなかったことでしょう。
生前整理の具体的な方法として、以下の4つのポイントを挙げておきます。
・必要なものと不要なものを分別する
・貴重品や重要書類をまとめる
・財産目録を作成する
・エンディングノートを書く
アキラさんは、この経験を通じて生前整理の重要性を痛感しました。「今後は、自分自身の生前整理にも取り組みたいと思います。いつ何が起こるかわからない時代ですから、年齢は関係ないかもしれませんね……」
生前整理は、自分のためだけでなく、愛する家族のためでもあります。今回のアキラさんの体験が、多くの人々の目覚めのきっかけとなることを願います。高齢化社会が進む中、生前整理の重要性はますます高まっていくでしょう。
三原 由紀
プレ定年専門FP®