最初は恐縮しきっていたが…A家で起きはじめた“異変” 

突然、予想外の大金を受け取ったAさんとBさん。当初は恐縮しきりで「このお金は使わずCたちに遺そう」と話していました。

しかし、「自分たちには余裕がある」という気持ちから、徐々に生活水準が上がっていきます。そして数ヵ月経つ頃には、「せっかく伯父さんが『Bのために』と遺してくれたんだから、使わないのは逆に失礼」などと強引な理由をこじつけ、贅沢に拍車がかかっていったのでした。

まず、もともと退職金を使って購入予定だった新車の予算が上がり、Aさんが憧れていたセダンタイプの高級ドイツ車を購入。さらに、これまでは近場で楽しんでいた夫婦の旅行先が国内リゾートや海外に。海外旅行の飛行機は当然ビジネスクラスです。

やがて、離れて暮らすCさんも両親の“異変”に気づくようになります。

C「今回もお土産ありがとう~。最近やけに頻繁に旅行するようになったよね。ガレージにある車もあれ、めちゃくちゃ高いやつでしょ? なに、宝くじでも当たったの?」

B「実はね、Dおじちゃんいたでしょ? おじちゃんがね、お母さんにお金を遺してくれていたのよ……使い道に困っちゃうくらい。ああ、もちろんCやお孫ちゃんの分は取っといてあるし、いつかあなたにもちゃんと言おうと思っていたんだけど……」

すると、Cさんの目の色が変わりました。

「あ……そうなんだ。ふ~ん。……いいなぁ、ウチもそろそろ車買い替えたいんだよね……」

A「そうか! もちろんパパたちが買ってあげるよ。どんな車がいい?」

それからというもの、Cさんは実家を訪れるたびに「子どもに新しい習い事をさせたいの」「ママ友たちとごはんに行くときに着るおしゃれな服がほしいな」「賃貸暮らしはもううんざり。私たちもマイホームに住みたい」などと、なにかにつけて金銭援助を要求してきます。

これまでのCさんは、A夫婦が孫(Cさんの子)の欲しがるものを買ってあげようとすると「なんでもかんでも買ってあげなくていいから。甘やかさないで」と注意していました。夫婦は「いやあ、しっかりした娘に育ったもんだ」と感慨深く話したものです。

それが、遺産の存在を知った途端に豹変。両親想いで優しかったはずのCさんは、すっかり“クレクレ娘”になってしまいました。

そんなCさんをみていたA夫婦は、自分たちの浮かれた生活を反省。そして、変わってしまった娘に大きなショックを受けています。

「いまのCは見ていられない。自分たちに非があることは認めるが、いくらなんでも目に余る。こんなことになるのなら、お金なんていらなかったよ……正直、娘のあんな姿をみていると後悔ばかりだ。いまはちっとも幸せじゃない」

A夫婦は、うなだれながら筆者にそう話してくれました。