65歳で定年退職を迎え、穏やかなセカンドライフを満喫していた夫婦。ところが“まさかのできごと”により、夫婦は「お金なんていらない」と嘆くハメに……。いったいなにがあったのか、具体的な事例をもとに詳しくみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和が、解説します。※プライバシー保護のため登場人物等の情報を一部変更しています。

お金なんていらない…〈年金月26万円〉〈資産1.2億円〉60代“勝ち組”夫婦が「ちっとも幸せじゃない」と嘆くワケ【CFPが解説】
最初は恐縮しきっていたが…A家で起きはじめた“異変”
突然、予想外の大金を受け取ったAさんとBさん。当初は恐縮しきりで「このお金は使わずCたちに遺そう」と話していました。
しかし、「自分たちには余裕がある」という気持ちから、徐々に生活水準が上がっていきます。そして数ヵ月経つ頃には、「せっかく伯父さんが『Bのために』と遺してくれたんだから、使わないのは逆に失礼」などと強引な理由をこじつけ、贅沢に拍車がかかっていったのでした。
まず、もともと退職金を使って購入予定だった新車の予算が上がり、Aさんが憧れていたセダンタイプの高級ドイツ車を購入。さらに、これまでは近場で楽しんでいた夫婦の旅行先が国内リゾートや海外に。海外旅行の飛行機は当然ビジネスクラスです。
やがて、離れて暮らすCさんも両親の“異変”に気づくようになります。
C「今回もお土産ありがとう~。最近やけに頻繁に旅行するようになったよね。ガレージにある車もあれ、めちゃくちゃ高いやつでしょ? なに、宝くじでも当たったの?」
B「実はね、Dおじちゃんいたでしょ? おじちゃんがね、お母さんにお金を遺してくれていたのよ……使い道に困っちゃうくらい。ああ、もちろんCやお孫ちゃんの分は取っといてあるし、いつかあなたにもちゃんと言おうと思っていたんだけど……」
すると、Cさんの目の色が変わりました。
「あ……そうなんだ。ふ~ん。……いいなぁ、ウチもそろそろ車買い替えたいんだよね……」
A「そうか! もちろんパパたちが買ってあげるよ。どんな車がいい?」
それからというもの、Cさんは実家を訪れるたびに「子どもに新しい習い事をさせたいの」「ママ友たちとごはんに行くときに着るおしゃれな服がほしいな」「賃貸暮らしはもううんざり。私たちもマイホームに住みたい」などと、なにかにつけて金銭援助を要求してきます。
これまでのCさんは、A夫婦が孫(Cさんの子)の欲しがるものを買ってあげようとすると「なんでもかんでも買ってあげなくていいから。甘やかさないで」と注意していました。夫婦は「いやあ、しっかりした娘に育ったもんだ」と感慨深く話したものです。
それが、遺産の存在を知った途端に豹変。両親想いで優しかったはずのCさんは、すっかり“クレクレ娘”になってしまいました。
そんなCさんをみていたA夫婦は、自分たちの浮かれた生活を反省。そして、変わってしまった娘に大きなショックを受けています。
「いまのCは見ていられない。自分たちに非があることは認めるが、いくらなんでも目に余る。こんなことになるのなら、お金なんていらなかったよ……正直、娘のあんな姿をみていると後悔ばかりだ。いまはちっとも幸せじゃない」
A夫婦は、うなだれながら筆者にそう話してくれました。