夫の急逝により、2人の子どもと3人での生活を余儀なくされた専業主婦のAさん。その後、親戚から「遺族年金」の話を聞いたAさんは、年金事務所へ相談へ行くことに。すると、職員から「予想外の回答」が……。いったいなにがあったのか、事例をもとに“遺族年金の落とし穴”をみていきましょう。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の五十嵐義典CFPが解説します。

なにかの間違いでは…年金月17万円のはずが、2歳年下の夫を亡くした48歳専業主婦、まさかの〈遺族年金額〉に悲鳴「聞いていた話と違う!」【CFPの助言】
Aさんが受け取ることのできる「遺族年金額」は?
両親が紹介してくれた親戚とは、早くに夫を亡くし、2人の子どもを持つ女性Fさんでした。FさんはAさんに“国の助けを借りること”を勧めます。
「遺族年金の手続きはした? CくんもDちゃんもまだ18歳以下でしょう。年金請求書を書いて、いくつかの書類を準備して年金事務所で手続きすると、遺族年金がもらえるはずよ。私のとこは夫が18年くらい厚生年金に加入していたから、遺族基礎年金と遺族厚生年金両方もらえて、合計で年間200万円くらいだったわ。Aさんのとこはどうなんでしょうね?」
Fさんによると、遺族基礎年金は高校生までの子がいれば支給され、遺族厚生年金は会社員等で厚生年金に加入したことがあれば支給されるとのこと。Fさんの場合、夫を亡くした当時、子どもは2人とも高校生以下でした。また、亡くなった夫が厚生年金に18年程度入っていたことから、年間200万円支給されたそうです。
「年間200万円ってことは、月17万円くらいですよね。Bが独立するまでの20年間は厚生年金に加入していたから、うちも少なくとも17万円くらいはもらえそう……」
Fさんに話を聞いたBさんは遺族年金を請求するため、早速年金事務所を訪れました。
Aさんの遺族厚生年金は「ゼロ」…いったいなぜ?
しかし、年金事務所で担当者から告げられた事実は、あまりに予想外のものでした。
なんとAさんには、遺族年金のうち遺族厚生年金が支給されないというのです。そのため、Aさんが受け取ることのできる遺族年金は「遺族基礎年金」のみで、この総額が年間約129万円、ということでした。
このほか、遺族基礎年金の上乗せとして「遺族年金生活者支援給付金」が年間約6万円支給されますが、それでも合計135万円。月額に直すと11万円程度です。
「夫は新卒から独立する直前までずっと会社員だったのよ!? なのにどうして!? 聞いていた話と違う!」
Aさんは動揺を隠せません。遺族厚生年金が1円も支給されないのはなぜなのでしょうか。