いまや、高齢者の住まいの有力な選択肢になっている「老人ホーム」。しかし入居を検討する際に大きなハードルになるのが費用。「そんなにかかるんじゃ、無理ね……」という人であれば、公的な施設である「特別養護老人ホーム」が有力な候補となります。入居待ちも多いなか、念願叶って入居決定。しかし、安心するのはまだ早いようです。
年金月10万円〈75歳母〉待ちに待った「特養」入居決定に〈50歳長女〉歓喜も、6ヵ月で自宅に舞い戻る「何かの間違いでは?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

3ヵ月待ちで入居した「特養」だったが、半年後に退去勧告のまさか

それから3ヵ月。幸子さんの特養入居が決まりました。

 

――少し複雑な気持ちですが、これで介護からは解放される……ホッとしました

 

介護のプロが常に近くにいてくれる、そんな安心感もまた、安堵の理由でした。幸子さんが入居した特養は、久美子さんの自宅から車で30分ほどの距離。週末に会いに行くこともそれほど苦労ではない点もポイントでした。

 

これで心配は何もなし……そう思っていた半年後、思いもしないことが起こります。施設からの退去勧告。

 

――幸子さん、リハビリをすごく頑張って。先日、要介護2と判定されたんですよ。ただ、退去いただかないといけなくなりました

――えっ、退去!? 何かの間違いではないのですか?

 

特別養護老人ホームからの退去を求められる可能性は完全には排除できません。入居前に交わす契約書には、通常、退去の条件が記載されており、その内容に該当する事態が発生した場合、施設は正当な理由で退去を勧告することができます。ただほとんどの施設には猶予期間が設けられているため、その間に次の施設を探すことも。

 

退去要件としては、主に以下の5つ。特例入所の要件を満たしていれば要介護1や2でも特養に入所できますが、基本的に要介護3以上を入所条件としているため、幸子さんのように要介護3→要介護2となった時点で退去勧告がされることがあります。

 

・要介護度が3未満になった

・施設利用料を滞納している

・長期の入院が必要になった

・職員・入居者への迷惑行為

・特養で対応できない医療行為が必要になった

 

東京都の調査によると、退所(居)理由として最も多いのが「看取り(死亡)」で57.1%。「医療機関への転院」が36.1%。「在宅復帰」は1.3%でした。数としては少数派ですが、回復による特養退去も十分ありえるのです。

 

――費用的に民間のホームに転居は考えにくいので……どうしたらいいのでしょう?

 

要介護2になったということは、以前よりも介護負担は軽くなったということ。しかし人の手をまったく借りずに日常生活が送れるわけではありませんし、経済的なことを考えるとすべてを外部サービスに頼るわけにもいきません。とりあえず、様子をみるしかないと久美子さんは語っています。

 

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[参考資料]

厚生労働省『特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)』

厚生労働省『サービスにかかる利用料』

東京都社会福祉協議会『令和5年度 東京都内特別養護老人ホーム入所(居)待機者に関する実態調査』