介護費用を工面するにあたって、親に直接「お金の話」をすることに抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。親のお金を把握するための具体的なステップや、安心して介護費用を計画するためのポイントについて、介護ジャーナリストの太田差惠子氏と芸人の安藤なつ氏による共著『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門 第2版』(KADOKAWA)より、詳しく解説します。
「貯金はいくらあるの?」と直接聞けないなら…親の資産と年金受給額を把握する方法【安藤なつが介護ジャーナリストに聞く】
親の預貯金を把握しているは4割程度
□どんな介護ができるかは、予算ありき
□認知症などになると聞けなくなる
安藤:毎月かかる費用は年金でまかなうとしても、急な出費があったり、施設入居を決めて、まとまったお金が必要になることもありますよね。
太田:そうですね。年金で足りない分は、預貯金でまかないます。
安藤:その場合、子どもが親の預貯金から必要額を引き出して支払うことになりますか?
太田:実は、それってとても難しいんです。子どもといっても親の口座から勝手にお金を引き出すことはできません。そもそも、親がどの金融機関に口座を持っているのか、どれくらいの金額が入っているのかを知っていますか?
安藤:ん-っ……。わかりません!
太田:そうなんです。多くの子どもは、親のお金がどのくらいあるのかは知りません。図表5のデータを見てもわかるように、50代後半でも知っているのは4割前後です。でも、知らないままでいると将来的に、非常に困ることになるんですよ。
安藤:どんな風に?
太田:たとえば、親が骨折で入院するとします。リハビリを受けたものの車いすでの生活に。しかも、判断力は大幅に低下してしまい、退院後は高齢者施設に入居してもらおうと考えるとします。
安藤:場合によっては認知症のような症状が出ることもありますよね。
太田:そうなんです、親本人が自分のお金がどこにどれくらいあるか、わからなくなることがあります。そうなると、まず、子どもは入院費用の支払いに困り、さらに、施設といってもどれくらいの価格帯のところを選べばいいか決められないことに。
安藤:恐ろしい!
太田:親が元気なうちに、「いざというときは、どのお金を使えばいい?」と聞いておきましょう。そして、総額でどれくらいの蓄えがあるかを知っておくことも大事です。
安藤:親にどう言って聞けばいいんですか。
太田:ここまでお話ししたような内容を伝えましょう。子どもが自分のことを心配して聞いてくれているとわかれば、少しずつ話してくれると思います。せめて「いざというときのために、どこかわかる場所に書いておいて!」とお願いを。一緒にキャッシュカードの保管場所と暗証番号も書いておいてもらうと一定額は引き出せるので助かります。
安藤 なつ
メイプル超合金
ヘルパー2級(介護職員初任者研修)
太田 差惠子
介護・暮らしジャーナリスト
