物価高騰が続く中、大学生の一人暮らしを支える親世代の経済的負担が増大しています。今回の事例では、年金受給を目前に控えた63歳の会社員が、仕送り増額を求める20歳の息子からのSOSに直面。家計の現状と教育費の実態などを交えながら、この複雑な状況への対処法について、FPの三原由紀氏が解説します。
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仕送りが足りなくてヤバいです…。大学に通う一人息子からの“切実なLINE”に年収360万円・年金受給目前の父、苦悩「いったいどうしたらいいのか」 【FPの助言】
息子への追加援助をしたいけれど、そう簡単にはいかない理由
仕送りの月7万円で足りない分は、息子自身がアルバイトをして賄っていました。収入は週3日で月6万円程度。家賃の安いアパートを選び、彼なりに生活を切り詰めて乗り切ってきたものの、物価上昇の煽りもあってやりくりが難しくなってきたといいます。
息子の窮状を聞き、田中さんは妻の喜子さんと対応を相談しました。しかし、夫婦には別の大きな課題がありました。それは、同居する喜子さんの母の介護問題です。
3年前まで喜子さんの兄夫婦が母と同居していたのですが、兄嫁との折り合いが悪く、実の娘の喜子さんにお役が回ってきたというわけです。喜子さんの実家は個人商店を営んでおり、母の年金は月4万円ほどと少額です。
母の年金は、これまで家計の補助となっていましたが、2ヵ月前に自宅で転倒し、現在はリハビリ病院に入院しています。入院費用は月15万円かかり、退院後は自宅での介護サービスも必要となります。母の年金だけではこれらの費用を賄うことは到底できません。
自宅の改修も必要となり、喜子さんはパートの勤務時間を減らさざるを得ず、家計の収入はさらに減少する見込みです。田中さん夫婦が受け取る予定の年金月23万円と1,000万円の貯蓄では、先行きの不安は拭えません。
「私たち夫婦の収入だけでは生活が厳しく、貯蓄を取り崩さなければならない状況。あと2年で年金暮らしですし、息子に追加で仕送りをすれば自分たちの老後生活が危うくなって、結局先々、息子に迷惑をかけることになるかもしれません。大学分はなんとかしたとしても、さらに大学院に行きたいと言われたら一体どうしたらいいのか……」と、田中さんは苦悩を隠せません。