令和3年度時点で119.5万世帯といわれている母子家庭(厚生労働省「 全国ひとり親世帯等調査」)。昨今の物価高の影響もあり、その生活は厳しさを増しているようです。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事である今井悠介氏の著書『体験格差』(講談社)より、ひとり親家庭のシビアな現実について、3人の子どもを育てるシングルマザー長谷川さん(仮名)の事例を紹介します。
後悔ですね…「昼はパート」「夜は水商売」で3人の子を育てるシングルマザー、中学生の息子から言われた「冷静なひと言」に猛反省【インタビュー】 (※写真はイメージです/PIXTA)

子に対しては優しい夫の「裏の顔」

―長谷川さんに対しては違ったわけですか。

 

酒癖ですね。豹変するぐらいだったので。仕事から帰ったらもうずっと休みなく飲んでる感じです。それで、急に怒り出したり、怒鳴ったりとか。あとは、長男は前の旦那の子なんですけど、下の子たちに対するのとで態度が違うというか。気にしすぎって言われたらそうなのかもしれないけど、私からしたらそこが気にかかってしまって。

 

例えば長男が小学校、中学校になったときのお小遣いも、こっちから言うのはやっぱり気が引けて。向こうから言ってくれたらいいんですけど、してくれなくて。そういうところですよね。だったら、自分も働いてたし、自分のパート代から出せばいいかって。

 

だから、離婚して色々なストレスは減りました。お金の面でも、私もずっと働いてきてはいるので、もちろん収入は減っているんですけど、何とかなるというか、何とかせざるを得ないという感じですね。

仕事は「掛け持ち」が基本も、貯金は“絶対できない”

―今はどんなお仕事をされていますか。

 

受付です。パートの仕事で、始めてから1年ぐらいですね。少し前までは保険の営業と掛け持ちでやってたんですけど、今はそこを辞めて雇用保険がもうすぐ終わります。なので、もう1つ掛け持ちできる仕事を今は探しています。

 

保険の仕事は営業のノルマもあるし、人間関係が良くなくて、会社にいるだけで憂鬱という感じでした。私が働いてた2年で8人ぐらい辞めてましたね。外回りがある仕事だったからまだ続けられましたけど。

 

―貯金はされていますか。

 

絶対できないです。してる人もやっぱりいるのかな。でも、最近はもうインスタントラーメンでもなんでも全部が高いから。生活できるだけでいいって思うしかないです。老後の不安もありますけど、目の前のことで精一杯なので。

 

出費は食費が一番大きいですね。小学生の娘と2人で子ども食堂に行って、お年寄りの方と一緒に折り紙して、ご飯を食べて、帰る、みたいなこともしてますね。お弁当の配布も、情報を見つけてもらいに行ったりとか。ガソリン代もきついので、車の冷房も弱めにしてます。

 

―例えばの話ですが、もし小学生の娘さんから「ピアノ教室に行きたい」と言われて、それに月額数千円かかるとしたら、どうされますか。

 

行かさないですね。ピアノはさせないと思います。後々のことを考えるんですよね。大人になってピアニストになるわけじゃないと思うんです。ピアノで生活できるのってきっと一握りの一握りじゃないですか。生活費から数千円削って何かに行かせるなら、後々に活きてくるようなものにしたくて。どうせ同じお金を出すなら。

 

例えば、そろばんだったりとか。そろばんは長男が年中から小3ぐらいまでしてたんですけど、数学が1番得意になって。

 

娘は保育園の頃から公民館で英語とダンスに行かせてますね。月に1回ずつでそれぞれ500円です。先生とも相性が良くて、娘も休みたいとか辞めたいとか言わずに続けてますね。行かせて良かったかなと思っています。

 

※インタビュイーのプライバシーに配慮して名前は仮名とし、一部の情報に加工を施している。

 

 

今井 悠介

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン

代表理事