11月に入り絶好の観光シーズンに突入したタイ(正式名称:タイ王国)に行ってまいりました。もちろん旅の目的は、最新のフードテック事情をリサーチすること。タイは東南アジアの中部に位置する常夏の国であり、エリアによって異なる多様な食文化が特徴です。そして今注目されているのが、プラントベースフード。実は世界の中でプラントベースフード市場を牽引するほどの実力を持つ国として、注目されているのです。
国家戦略として取り組む!?国民からも愛されるおいしいタイのプラントベースフード最新事情

自然栽培の植物性食材からつくられたプラントベースヨーグルト「flogurt」

専用のケースで販売されている「flogurt」。オリジナルの他、マンゴーパッション、カシューアーモンド、シュガーフリー、パッションフルーツ、バニラシナモンなど種類も豊富にそろっている。
専用のケースで販売されている「flogurt」。オリジナルの他、マンゴーパッション、カシューアーモンド、シュガーフリー、パッションフルーツ、バニラシナモンなど種類も豊富にそろっている。

 

バンコクの街中を歩いていて、「flogurt」という大きなブルーの看板を発見。想像だけではフローズンヨーグルトかなと思いましたが、正解は、100%植物性のヨーグルトでした。自然栽培によって育てられた大豆を主原料として作られる植物性ヨーグルトで、まるでデザートのようなおいしさと食べ心地に感動し、連日買いに行くほど気に入ってしまいました。日本ではこのタイプのヨーグルトになかなか出会うことができません。

 

特筆すべきは、乳製品、コレステロール、乳糖、遺伝子組み換え作物、グルテンを不使用なのはもちろんのこと、添加物、保存料、加工原料は一切なしで5億個の生きた乳酸菌による発酵によって製造されている点。

 

通常の植物性ヨーグルトはおいしい風味やテクスチャーを作り出すのが難しいとされています。このヨーグルトの製法も明らかにされていませんが、際立つおいしさからも技術力の高さや専門性を実感することができます。

国家戦略としてのタイのプラントベースフード市場

現地のタイ国民から愛されるプラントベースフードはどれを食べても非常においしく、それらを生み出す開発技術力の高さに驚きました。

 

ほとんどの食品において製造方法や開発の裏側は公開していないことは、スタートアップおよび大手食品企業を支援するタイの国家戦略としてとらえることができます。今後ますます需要が高まるプラントベース市場における国際競争力を磨き、世界をリードしていくことは間違いないでしょう。

 

一方、日本はヴィーガンの割合が少ないことなどが足かせとなり、プラントベースフードがタイほど普及しているわけではありません。しかしながら日本の食品加工技術は世界トップレベル。

 

海外における優れた技術や食文化と融合すること、技術提携や資本提携によって自国内における製造・販売だけを目指すだけではなく、海外展開を計画する食品企業が今後増えていくことは容易に想像ができます。

 

今後もプラントベースフード業界をひっぱるタイの動向と日本の追随を注目していきたいところです。

 

 

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<著者>

スギアカツキ

食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。