高齢者の孤独死や犯罪被害にまつわる報道が後を絶たない昨今、高齢の親の一人暮らしに不安を感じる人も少なくないのではないでしょうか。とはいえ、仕事や家庭の事情もあり、簡単に同居を選択することもままならない。そういった場合の選択肢の一つになるのが「高齢者施設」ですが、入居すれば必ずしも「安心」とも限らないようです。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、事例をもとに紹介します。
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老人ホームは「住まい」トラブル回避のポイントは?
高齢になった大切な親を実家に1人きりにしておくことは、多くの人にとって、気がかりなことのひとつではないでしょうか?
「できればそばにいたい」「一緒に生活できれば」と考えている人もいると思います。しかし、仕事や家庭の事情で、必ずしもその望みを叶えることが難しいのもまた事実です。
そういった状況の場合、老人ホームへ入居することは解決方法の1つとなり得ます。しかし、今回のAさん親子の事例では、施設へ入居してからの人間関係が上手くいきませんでした。彼らはこの先、どうすればよいのでしょうか?
【これからの対処法】
1.スタッフに新たに入居してきた人を紹介してもらう
2.施設の外へ出かける(馴染みのカラオケ教室へ)
3.施設のなかへ友人を招く(カラオケ教室の仲間に来てもらう)
既存の入居者との相性が悪い場合、スタッフの力を借りて新しく入居してきた人と交流する機会を設けてもらうことも、選択肢の1つです。入居者本人からスタッフに頼みづらい場合には、家族からスタッフに伝えてもらうとよいでしょう。
また、施設内だけで完結せず、以前に通っていたカラオケ教室へ施設から出かけていくことも可能です。老人ホームは隔離施設ではなく「住まい」なので、可能であれば、カラオケ教室の仲間を施設に招いて一緒に過ごすことも検討してみてもよいかもしれません。コロナ禍では、感染症対策で施設の出入りが制限されていましたが、最近では徐々に緩和されています。
最悪の場合、違う施設へ移るという選択もありますが、入居中の施設から退所する際には、部屋の原状回復費や引越し代、新たな施設では入居一時金などの費用が発生します。また、場所を移ると環境の変化もあるため、本人にとっては経済的にも体力的にも負担となります。
今回、Bさんは入居時に将来の家賃を先にまとめて支払う「前払い方式」を選択していたため、退所した場合は前払金として支払った費用の一部しか返ってきません。
入居する前に、そこで生活している入居者のことを把握することは難しいでしょう。しかし、なにかトラブルがあったときに「対処能力」が高い施設かどうかを判断するための材料として、下記のことが挙げられます。
【トラブルへの対処能力が高い施設の選び方】
1.人員配置が手厚い
2.有資格者が多い
3.勤続年数の長いスタッフが多い
1~3については施設の重要事項説明書に記載されていますので、入居する前にしっかりチェックしておきましょう。
また、インターネットでの口コミ評価が高かった施設を選択したけれど、思っていたほど評価が高いように感じなかったというケースも多々あります。
施設は「住まい」であり、人それぞれに生活習慣が異なります。スタッフとの関わり方もホテルのように丁寧な対応を好まれる人もいれば、家族のようにフレンドリーに接してもらいたいという人もいます。好みや価値観も違うため、ある人にとっては「よい施設」でも、別の人にとってはそうでないこともあります。入居前には施設見学や体験入居を利用し、入居者にとってよい施設かどうか、入居者本人の目でしっかり確認することが大切といえます。
武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役