いまや「東大・京大より医学部へ」。医学部に成績上位者が殺到
1990年代ごろまでは、 成績が良い学生は、東京大学や京都大学を目指すケースが多くありました。当時の医学部は一部の私立大学を除き、圧倒的に国公立大学が難しい傾向にあり、河合塾のデータでは、1990年当時のボーダーライン偏差値(合否確率が50%となる目安の偏差値)が50前後の私立大学も複数存在していました。 このように、かつては医学部のなかにも偏差値の幅があり、私立大学の医学部のなかには比較的入りやすい大学もありました。しかしバブル崩壊後から徐々に難化し、今では医学部人気の影響ですべての医学部の偏差値が軒並み上がっています。
日本の低成長や年功序列・終身雇用の崩壊などを背景に、東京大学や京都大学を卒業して大企業に就職しても将来が約束されないことは、周知の事実となりました。ここ数年、大学受験の志願者動向は文低理高になっており、そのなかでも、医療系学部、特に医学部医学科や歯学部、薬学部など資格取得に関係する学部は今まで以上に人気を集めています。
医学部が難化した要因には、女性志願者の増加も挙げられます。
昭和の時代は、女子が医療職に就く場合、薬剤師や看護師の割合が高い傾向にありました。しかし、女性の社会進出が進み、医学部進学を目指す女子が増加。2018年に発覚した医学部を巡る不正入試問題では、女子の医学部進学にスポットが当たりました。
これらの動きは、医学部人気の高まりと難化にさらに拍車をかけることになりました。
医学部に進むメリットは、①特別な専門技術を習得できる、②就職に困らない・転職が容易、③定年がない、④社会貢献ができる、⑤年収が高いなどです。
特に地方出身の女子は大きな企業が少ないために、地元就職で、かつ一生涯続けることができる仕事としては、公務員、学校の先生、そして医師ということになります。メディカルラボにおける入校生の男女比もほぼ50:50となっています。
男女ともに医師は一生涯を通して社会貢献ができ、経済的にも豊かな生活を送れると考えた受験生が増加したことが、医学部人気を確かにしたといえます。
ほかにも、メディアの影響も考えられます。例えば東日本大震災でボランティアが注目されて以降、社会貢献を意識する人が増えているようです。また、日々メディアを通じて医療関係者の活動を目にする機会も多く、これも中高生に大きな影響を与えていると思います。昨今でいうと、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う医療ひっ迫の報道を受け、「現場が困っているのなら、自分が行こう」と医学部を志望するケースも増えています。報道だけでなく、医療ドラマも高視聴率を取っており、これらに影響を受けた医学部志願者も少なくありません。
学力だけでなく、「覚悟」や「適性」も問われる
2025年度入試の予想難易度は図表1・2のとおりです。
医学部の出題傾向は大学によって千差万別。国公立大学でも医学部独自の出題が多いのが特徴です。医学部独自の出題をしている大学では、英語の長文読解に医療系の問題が出題されるなど、学科試験の内容にも医学部ならではの傾向がみられます。また、理系科目も、他学部の出題より難度を上げている大学が多くなっています。特に私立大学の場合は大学によって出題傾向が大きく異なるため、過去問などを利用して早めに志望大学の出題傾向を知る必要があります。
また、医学部入試では、受験生の医療に携わる覚悟や適性を確認するために面接・小論文を課す大学がほとんどです。医学部入試は、高い学力だけでなく、医療への強い志望や適性も求められる厳しい戦いとなっています。他学部に比べて倍率も高く、定員減少も予定されていますので、今後ますます狭き門になると考えられます。
医学部人気の高まりを受け、医学部進学に特化した専門予備校が増えています。全国の専門予備校はいまや200校あるといわれるなか、医系専門予備校メディカルラボは、医系専門予備校として合格者数No.1(※)の実績を持ち、2007年~2024年度入試の累計合格実績は10,000人を突破しています(※株式会社東京商工リサーチ調べ)。なかには、高校3年生の11月時点の模試でE判定から入校し、合格した人もいます。