「腸内フローラ」=「腸内環境」のことではない

「腸内環境」とよく言いますが、この腸内環境の構成要素は3つあります。

① 腸内フローラ(腸内細菌叢、腸内常在微生物叢ともいう)

② 腸管機能

③ 食事(食事をすることで腸にやってくる栄養分等)

みなさんご存じの「腸内フローラ」は、腸内環境のことではなく、腸内環境の中の1つの要素です。

小腸から大腸にかけて腸の壁にはたくさんの襞があります。襞にはおよそ1000種類、100兆個もの細菌が棲み、フローラ(細菌叢)という群れをつくっています。腸内の細菌は、人が食べた食事の栄養分をもとに発酵して増殖します。

腸内フローラを良好に保つには、食物繊維やオリゴ糖などを摂取することがもっとも重要です。これらは、難消化性多糖類と呼ばれ、腸内フローラのエネルギー源となります。

難消化性多糖類は、大腸内に到着すると、重要な基質(栄養分)として嫌気発酵を行います。この発酵により、腸内フローラはエネルギーを獲得します。

この大腸内発酵における代謝産物は、短鎖脂肪酸、メタン、水素ガス、アンモニアなどです。このうち、短鎖脂肪酸に含まれる「酪酸」は、近年、「天然の痩せ薬」といわれ注目を集めています。

大腸内で作り出される「酪酸」は「天然の痩せ薬」

大腸内発酵の代謝産物である短鎖脂肪酸ですが、これは食物繊維を分解する過程で作り出されます。この短鎖脂肪酸は主に「酪酸」「プロピオン酸」「酢酸」の3種類があり、このうち「酪酸」は、大腸の腸管上皮細胞のエネルギー源で、整腸効果や腸の炎症抑制、免疫力の向上にも作用することがわかっています。

さらに近年、米国の研究により、酪酸に「肥満抑制効果」があることが明らかになりました。脂肪細胞には酪酸を感知するセンサーがあり、酪酸を感知すると、「中性脂肪の蓄えをやめる」という働きが起きるのです。この研究では、「肥満の人の腸内では、腸内細菌叢が変化し、短鎖脂肪酸を作り出す力が落ちている」ことも判明しました。

要するに、腸内細菌および腸内環境が正常ならば、太りにくい体でいられるのです。

松生 恒夫
松生クリニック
院長