親が遠方に住んでいる場合、子は親を心配して施設への入所を勧めるケースもあるでしょう。しかし、後に大きな後悔に変わることも多いようです。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが具体的な事例をもとに、高齢者施設を選ぶ際の注意点を紹介します。
施設は嫌じゃあ…東京在住・40代息子夫婦の説得で「老人ホーム」に“嫌々”入居した、年金月17万円・83歳男性の末路【FPの助言】
理想の“終の棲家”選びに欠かせないポイント
高齢者施設に入れた場合、金銭的負担が大きい
とはいえ、高齢者施設に入れるとなると今度は金銭的な負担が少なくありません。
Cさんが入居した「サービス付き高齢者向け住宅等」の月額利用料の平均額は約14万円です。なんとか年金で入居できる金額ですが、自営業や個人事業主など、収入が国民年金のみの場合は支払いが難しい場合もあります。
このように、老後の選択肢を増やすためには資金の事前準備が不可欠です。しかし、現役世代で介護の資金を準備できている人はせいぜい1割程度といわれています。
老人ホームに入居すれば専門のスタッフが常駐し、食事も提供されることから、入居者もその家族も安心できるでしょう。しかし、2017年度の厚生労働省の調査によると、約7割が人生の最期を迎えたい場所として「自宅を望む」という結果が出ています。
とはいえ、親の望みを優先しすぎるのはおすすめしません。無理をして自宅での介護を選択した結果、介護離職で経済的に苦しくなり、肉体的・精神的に追い詰められ、虐待に走ってしまうという悲劇も少なくないためです。
後日談…「本人の思い」と「家族の思い」のすれ違いが生む“後悔”
一時は不穏になっていたCさんですが、Aさん一家が定期的に施設を訪問することで症状が落ち着き、現在は小康状態を取り戻しているようです。
今回のAさんとCさんのように、親のことを思って老人ホームを勧めた結果、その子どもが後悔するというケースが増えています。
一生の後悔を生まないためには、念入りなコミュニケーションが不可欠です。親の考えと自分たちの考えをお互いに伝えあい、なにが最善かを擦り合わせて、納得のいく選択肢をみつけられるように何度も話し合う必要があるでしょう。
また、高齢者施設を選ぶうえでいくつかめどがついたら、必ず「本人も」施設見学を行いましょう。ホームページやパンフレットに載っている連絡先に見学したい旨を伝えれば、担当のスタッフが案内してくれます。わからないことや疑問点があればスタッフに質問すれば詳しく答えてもらえます。老人ホーム選びで確認しておきたいポイントとしては下記のとおりです。
・看取りは可能か(終の棲家となりえるのか)
・医療機関との連携はあるのか(いざというときのために)
・食事のメニューは満足か(毎日のことであり、食事は楽しみのひとつ)
・趣味活動、日々のルーティーン(習慣)の継続は可能か
高齢者にとって、急激な環境の変化は避けたいところ。親に遠方で1人暮らしを続けてもらうのか、自宅の近くにある施設に入ってもらうのか、家族ごとに状況が違うので一概になにがいいとはいえませんが、後悔のないように家族で充分な話し合いを心がけましょう。
武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役