不動産投資で「法人化する」とはどういうこと?
不動産投資で法人化すると、具体的にどのような変化があるのでしょうか。法人化の概要やメリット・デメリットを解説します。
個人運営から会社運営へ
不動産投資の法人化とは、不動産投資の運営を個人から法人へと変更することです。具体的には、投資家を代表とする資産管理会社を設立して、不動産投資を法人として行ないます。
法人化による変化として、報酬の受け取り方が挙げられます。個人の場合は、家賃収入をそのまま個人の所得として受け取りますが、法人化すると入居者が支払われる家賃は個人の所得として受け取らず、法人からの役員報酬として受け取る形に変化します。
法人化するメリット
不動産投資の法人化により、4つのメリットが得られます。
■節税になる
まず1点目は節税になることです。個人の場合は所得によって所得税率が5~45%となりますが、法人の場合は所得に法人税がかかり、税率は一律23.2%となります。さらに、資本金が1億円以下の法人では、年800万円までの所得の税率が15%になります。
また、相続税の節約も可能です。不動産を法人名義にすれば、代表者が亡くなっても不動産の名義は法人のため、相続税はかかりません。
■経費の範囲が広がる
2点目は経費の範囲が広がることです。個人でもある程度経費は計上できますが、法人になると経費にできる範囲が広がります。例えば、法人から事業主へ支払う給与や退職金が、一定の要件を満たせば経費になります。さらに、家族を従業員にして給与や退職金を支払えば、それらも経費として計上することが可能です。個人事業のように1人で所得を計上すると税率が高くなりますが、家族などに所得を分散することで、全体で支払う税金を抑えられるでしょう。ただし、従業員を安易に増やすと社会保険料の負担が増えることがあります。
また、個人の場合は生命保険料に対する所得控除しかなく、控除できる金額は4万円までとなっています。それに対し、法人では役員や従業員のために加入する生命保険は、保険の種類によって一部または全額を経費にできます。
■欠損金(赤字)の繰越期間が10年に
3点目は、欠損金(赤字)の繰越期間が10年になることです。繰り越した赤字は、黒字になった年に相殺することで所得金額が減って節税につながります。個人では欠損金の繰越期間が最長3年のため、法人では欠損金繰越のメリットをより活かせるようになるでしょう。
■決算月を自由に決められる
4点目は、決算月を自由に決められることです。個人では決算月が12月と決められていますが、法人であれば自由に設定できます。入退去が多い時期を避ければ、業務負担を軽減できるでしょう。
法人化するデメリット
法人化には、メリットだけではなくデメリットもあります。
■法人化の手間や費用が増える
1点目は、法人化の手間や費用が増えることです。例えば、法人設立登記のために登記手数料などの初期費用がかかります。法人の規模や種類によって金額は異なりますが、開業届の提出だけで済む個人よりも、手間も費用もかかるでしょう。
また、個人の場合には必須ではなかった、社会保険料への加入が求められます。さらに、個人のときは会計業務を自身で行なっていた方も、法人になると処理が難しくなってくるため、税理士へ依頼がするのが一般的です。その場合、税理士報酬も発生します。
このほかに、法人では赤字でも発生する税金があります。個人では収入が一定以下になると住民税が課されませんが、法人にかかる法人住民税は赤字でも課税されます。法人の資本金や従業員数に応じて課税額は異なりますが、均等割として少なくとも年に7万円を納税しなければなりません。
■法人として相続対策が必要
2点目は、法人として相続対策が必要であることです。法人化すると出資持分や保有している株式などに相続税がかかるため、対策を行なっておかなければ、法人化による節税効果がなくなってしまう可能性があるでしょう。
■個人よりも法人のほうが不利になるケースがある
3点目は、個人よりも法人のほうが不利になるケースがあることです。例えば、役員に支払う給与は、原則的に経費にできない「損金不算入」として扱われます。経費として計上するためには、年度内に同じ金額を毎月支払う「定期同額給与」などの条件を満たさなければなりません。
また個人所有不動産では、所有期間が5年超の不動産を売却した際の所得が長期譲渡所得となり約20%の税率がかかります。一方、法人では所有期間にかかわらず、不動産の売却金にかかる税率は約30%になります。
不動産投資で法人化したほうが良いタイミングはいつ?
不動産投資の法人化には、メリットだけでなくデメリットもありますが、どのタイミングで法人化するのがよいのでしょうか。4つのパターンについて解説します。
最初から法人化する
将来的に法人化を考えているのであれば、最初から法人化する選択肢もあります。個人事業から法人化すると、個人から法人へ不動産を売却する形をとることになり、不動産取得税や登記費用がかかります。つまり、同じ物件に対して、これらの費用を2回支払わなければならないということです。
法人設立には初期費用がかかりますが、不動産取得税のような二重にかかる費用を抑えたり、節税効果があったりするため、それほど大きな負担にはならないでしょう。
年収が高い人
不動産事業が黒字で、なおかつ課税所得金額が900万円を超えているときも、法人化するタイミングの一つです。会社員だと、給与所得と不動産所得を合算したものから所得税が計算されるため、給与所得が高いと税率が高くなるからです。
ちなみに課税所得金額900万円は、税込み年収だと1,400万円~1,500万円ほどにあたります。
とはいえ、課税所得金額が900万円以上なら、誰でも法人化すれば良いわけではありません。建物の減価償却費の状況などによっては、個人のままのほうが良いケースもあります。
一方で、不動産所得が330万円以下の専業大家であれば、法人化を急ぐ必要はないでしょう。不動産所得が330万円以下だと、個人と法人の税率にあまり大きな差がありませんが、法人になると個人よりもランニングコストがかかってしまいます。
本業として不動産投資を行ないたい場合
副業ではなく本業として不動産投資を行ないたい場合には、法人化を目指すとよいでしょう。個人と法人とでは得られる信頼度が異なるからです。例えば、法人化しているほうが、入居者や管理会社からの信頼を得やすくなります。
また、金融機関からの融資も法人のほうが受けやすいでしょう。最初から法人として融資などの実績を築いていけば、事業を拡大する際に有利な条件で融資を受けられます。
会社運用のために時間や費用を割ける人
法人化すると、個人と比べて会計が複雑になり、税務処理が難しくなります。そのため、法人化すると税理士などを雇うことが一般的です。ほかにも、法人になると社会保険への加入も原則必要になり、手続きなどの手間や費用がかかります。
したがって、事業の運営に時間や費用を割ける人でなければ法人化は難しいでしょう。
不動産投資で法人化する際の注意点
不動産投資で法人化する際には、いくつか注意点があります。ここでは注意点として3つを解説します。
会社員は要注意
会社員として勤務している方は、就業規則や社内規定などをよく確認しておきましょう。勤務先の会社によっては、副業・兼業が禁止されていたり、所有する不動産の室数や棟数に制限が設けられていたりします。個人で不動産投資を行なう場合は副業にあたらないとされているケースもありますが、法人化をすると副業と判断される可能性が高くなります。
就業規則などで法人化が難しそうであれば、配偶者など家族を代表にして法人化する方法もあります。
法人のお金は自由に使えない
個人事業とそれほど変わらない規模の法人であれば、個人のときと同じように家賃収入を自由に使えると思う方もいるかもしれません。
しかし、法人だと経費を差し引いた家賃収入は会社の剰余金として扱われるため、個人の口座へ自由に移動できません。剰余金を勝手に個人口座へ移したり使ったりすると、業務上横領と判断されるケースもあるため、取り扱いには注意が必要です。
所得の分散に注意
法人化して家族を従業員にすれば、給与を経費にできるため節税が可能ですが、給与額は自由に決められるわけではありません。
給与額は、対象となる従業員の業務量・能力・経験値などによって判断されます。所得分散を目的とした場合に認められる一般的な給与額は、最高裁の判例などから年間36万円以上100万円未満とされているため、妥当性のある金額を給与として払いましょう。
投資の幅を広げるには不動産投資クラウドファンディングの検討を
不動産投資の法人化により、税率が下がったり、経費にできる費用の幅が広がったりするなどのメリットがあります。法人化がおすすめとなるのは、年収が高い方や本業として不動産投資を行ないたい方などです。
一方で、法人化により手間や費用が増えるなどのデメリットもあるため、現状をよく考えて法人化を検討する必要があるでしょう。ランニングコストの増大によって利益が失われてしまう可能性もあります。
法人化に備えて、事業を継続していくためにも複数の収入源を確保することも検討しておくべきでしょう。その不動産投資以外の収入源として、不動産投資クラウドファンディングを検討してみてはいかがでしょうか。
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【監修者】
氏名:太田 照明
保有資格:損害保険トータルプランナー、生命保険協会認定FP、CFP、1級FP技能士
主なキャリア:大学を卒業後、自動車と外食産業の営業を経験し、その後保険業界へ。