経理担当者であれば、一度は耳にしたことがある「減価償却」。しかし、その内容をしっかりと理解している人は、少ないのではないでしょうか? 今回は、ちょっとややこしい「減価償却」の仕組みについて、税理士法人メディア・エス社員税理士の田中康雄氏が、詳しく解説していきます。
【ビジネスの幅が広がる会計学】「減価償却」の基礎知識を税理士が徹底解説! (※写真はイメージです/PIXTA)

減価償却の注意点

減価償却費は、会計上の費用としても税務上の費用(損金)としても認められていますが、法人税では、法定耐用年数を使って算定した減価償却費を上限として、計上する金額は任意となっています。

 

つまり、法人に限っては、減価償却は強制適用ではなく、その事業年度の利益に応じて申告します。極端なケースでは、償却費をゼロとして申告をしても、税務上は問題ありません。

 

ただし、会計上のルールとしては、こうした任意償却は認められていません。例えば、金融機関などに決算書を提出している会社などは、会計上の任意償却によって利益操作の疑いを持たれる可能性があるため、注意が必要です。

 

法定耐用年数の適用は「課税の公平性」の担保のために必須

減価償却は、固定資産の取得価額をその使用可能期間に応じて、各期に費用按分する手続きです。そして、減価償却費の計算の基礎となる耐用年数や償却方法の選択について、これを会社の裁量に任せてしまうと、税務が求める課税の公平性を確保することはできません。

 

本来、会計上の視点からすれば、耐用年数や償却方法は、各会社の実態にあわせて、その会社の意思決定に任せるべきなのかもしれませんが、多くの会社では、課税の公平性という税務上の制約に従い、会計上においても、法人税で法定化された耐用年数や償却方法を使って減価償却費を計上しているというのが、実務的な処理方法になっています。

 

 

著者:田中 康雄

 

税理士法人メディア・エス/税理士

 

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