夏の夜空を彩る打ち上げ花火。コロナ禍で自粛となっていた花火大会も、今年は完全復活となる見込みです。そんな花火が、昨今はさまざまなテクノロジーを盛り込むことで、新たな形へと変貌を遂げていることをご存じでしょうか。「伝統」と「最新テック」により観るものを魅了する、最新の花火事情に迫ります。
日本の伝統文化が最新技術で進化!“令和の花火”で導入されているテクノロジー最前線

 ※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

打ち上げ花火はコンピュータ制御が当たり前に

そもそも花火とは何かというと、火薬類を燃焼、または爆発させることで発生する光や音、煙を観賞用に転用したものです。そして花火大会でおなじみの「打ち上げ花火」は、打ち上げ用の筒で丸いボールのような「花火玉」を打ち上げ、上空で破裂させるもの。打ち上げ筒にセットされた花火玉の下には打ち上げ用の火薬が入っており、そこに点火すると、花火の導火線にも火がついて打ち上げられる仕組みです。

 

そんな打ち上げ花火にも、現在はテクノロジーによる変化が訪れています。かつては職人が導火線に直接火をつける手動での点火が当たり前でしたが、技術が進み、現在はコンピュータ制御による自動点火が主流に。具体的には、打ち上げソフトをインストールしたパソコンと点火装置をケーブルでつなぎ、打ち上げソフトから点火・中断・スピード調整などの指示が出される……といった仕組みが一例で、このようなコンピュータ制御により、点火や開花のタイミングを自在にコントロールすることが可能となっているのです。

花火×3Dサウンド×プロジェクションマッピング……新たな花火ショー

そんな打ち上げ花火の魅力といえば、やはり迫力ある“光”と“音”。昨今は、それに加えて臨場感ある3Dサウンドや最先端のプロジェクションマッピング、ドローンなどの最新テックを盛り込んだ“花火ショー”も人気を集めています。

 

そうした新たな花火ショーのひとつが、エイベックス・ライヴ・クリエイティヴが手掛ける「STARISLAND」です。同ショーは、日本発の“未来型花火エンターテインメント”と銘打ち、2017年からこれまでお台場海浜公園、シンガポール、サウジアラビアなど国内外で数回にわたって実施され、延べ1500万人以上を動員。今年は5年ぶりの国内開催として、5月、6月に福岡と東京で開催されました。

 

「STARISLAND2024」
「STARISLAND2024」

 

同ショーでは、「LIFEISAJOURNEY」というコンセプトに合わせて、テクノロジーと、「丸玉屋小勝煙火店」「マルゴー」「紅屋青木煙火店」など3つの花火チームによる1日1万2000発の花火のコラボレーションを実現。総合演出を、東京2020パラリンピック競技大会閉会式のショーディレクターなどを務め「STARISLAND」を立ち上げからプロデュースしてきた小橋賢児氏が担当し、日本伝統の花火に「ドローン」「レーザー」「3Dサウンド」などのテクノロジーの要素を盛り込んだ花火ショーを行いました。

 

たとえば「ドローン」は、空一面をスクリーンに見立てて、ストーリーの要所で登場。1000機のドローンがフェニックスや昇り竜、ロゴなどさまざまなモチーフに形を変え、そのドローンと音楽に合わせて花火が打ち上がる演出となっています。

 

「STARISLAND2024」
「STARISLAND2024」

 

また、「レーザー」は観客席全体を包み込む光線や、空を突き抜ける激しいビームなどで視覚的な没入感を演出。「3Dサウンド」は、数百台の3Dサウンドスピーカーを会場に設置することで来場者が360°立体的に音に包み込まれる効果を生み出すなど、さまざまなテクノロジー要素を花火に合わせてミックスしているのが特徴です。

 

「STARISLAND2024」
「STARISLAND2024」

 

同ショーの広報担当は「すべてのエンタメ要素がミックスされているのが『STARISLAND』ならではの魅力」とアピールしており、今後の開催予定についてはまだ明らかになっていませんが、新しい花火ショーの形としてこれからも注目を集めそうです。