安全性に問題があると認定された成分

具体的にこれが効かないと指摘するのは簡単ですが、前述したように商品名を出すと営業妨害だといわれかねません。

しかし、何が効かないのかは誰もが知りたいことでしょう。そこで、変形性関節症に対する健康食品以外の健康食品で、その効果に疑いがある、あるいは安全性に問題があると国立健康・栄養研究所で認定された成分について、図表1に示しました。この表の成分について解説してみましょう。

出典:『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』(総合法令出版)より抜粋
[図表1]安全性に問題がある成分 出典:『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』(総合法令出版)より抜粋

プラセンタは馬や豚の胎盤から抽出したものですが、食用での滋養強壮や美容に関するヒトへの有効性のデータは確認されていません。

一方でプラセンタに対するアレルギー反応により、皮膚炎や皮膚硬化などが発生する事例が確認されています。さらに、薬剤性肝機能障害や肺炎の事例も報告されています。

クロレラは古くから健康にいいとされ、さまざまな製品が販売されてきました。がん予防に効果があるとされていますが、実際にはがんの進行を抑制する具体的なデー
タは示されていません。

クロレラは単細胞緑藻で、主に湖沼や河川などに生息しています。光合成によって生長しますが、生物学的には単細胞性の植物という位置づけです。ある意味では当たり前ですが、普通の草を食べているのと何ら変わりはありません。アレルギーや慢性関節リウマチを持病とする人が摂食すると、疾患を増悪させる可能性が示唆されています。

ウコンには肝臓の機能を高める効果があることが確認されていますが、過剰摂取すると、鉄分の肝臓内での貯留により、肝機能障害の危険性があると考えられています。肝機能の弱っている人や、胃潰瘍、胆石の持病がある人の場合は、特に注意が必要です。

ローヤルゼリーには、更年期障害に対する有効性は認められていますが、アレルギー性鼻炎に対しては効果が認められず、むしろ悪化するという事例が報告されています。重篤なアナフィラキシーショックを起こしたとする事例もあり、アレルギーに対する使用には注意が必要です。

アントシアニンは吸収効率が極めて悪く、経口摂取しても目における十分な濃度が得られず、視力回復や白内障、緑内障に対する予防効果はないと考えられます。
マカに含まれる成分には生殖器機能の改善効果についての研究はなく、メタボリックシンドロームの患者において、AST、ALT といった肝障害を示す数値が上昇したとする報告や、血圧の上昇に関する副作用が報告されています。

アガリクスは姫マツタケともよばれる、マツタケとは異なるハラタケ属のマッシュルームに近い種類のキノコです。

30年くらい前、クレスチンというがんに対する薬剤が認可されていましたが、これはカワラタケというサルノコシカケに近い種類のキノコの抽出物です。

この医薬品の主成分はβグルカンとよばれる多糖成分ですが、このβグルカンをカワラタケより多く含んでいるキノコがアガリクスです。これが、がんに有効だとする根拠ですが、医薬品になったクレスチンについて、安全性は高いものの、がん治療に対する有効性が低く、有用な抗がん剤の普及に伴い利用されなくなった歴史があります。

つまり、実際のところアガリスクにはがんに対する有効性は低いといわざるを得ません。

事実、有効性、安全性に関する信頼度の高い研究報告はありません。ある動物実験においては過剰摂取した場合、逆に発がんを促進してしまったとする報告もあります。肝障害や肺炎を起こしたとする学会報告もあります。

イチョウ葉エキスはドイツでは医薬品として承認されています。しかしながら、日本で販売されている商品は粗悪品が多く、アレルギー誘因物質であるギンコール酸の含有量がドイツ基準の3,200倍もの量の商品も確認されています。

ギンコール酸は銀杏の果肉に多く含まれており、皮膚に触れるとかぶれの原因になります。
このように、健康食品には効果が弱いこと以外にも危険性もあることを知っていただきたいと思います。

<まとめ>
・健康食品はあくまでも食品であり、医薬品ではない
・効果に疑いがある、安全性に問題があると認定された成分に要注意

今井 伸二郎
医学博士
代謝機能研究所所長/東京工科大学名誉教授/藤田医科大学客員教授