物理的な工事をせずに、園内をインタラクティブ空間へと変えるMRプラットフォーム「Auris」
最後に紹介するのは、MRプラットフォームAurisを活用した動物園の事例です。
ファミリー層をメインターゲットとする愛媛県立とべ動物園は、近年、少子化による「集客低減」や「施設の老朽化」という課題に直面しています。また、「若年層を中心とした新たなファン獲得のために動物園の魅力を積極的に発信したい」という想いがありながら、スタッフは既存業務に日々追われて、満足な発信ができていませんでした。
そうした状況に一石を投じたのがAurisを活用した2つのコンテンツです。1つ目が多言語音声ガイド。2つ目が謎解き体験イベントです。
1つ目の多言語音声ガイド「どうぶつガイド」は、今年4月から常設されています。参加者はAurisアプリをダウンロードしたスマートフォンを手に、イヤホンをつけて動物園を散策します。園内5ヵ所にある対象エリアを歩くと、動物の生態やプロフィールなどを教えてくれる音声コンテンツを楽しむことができます。
従来の専門機器による音声ガイドと異なり「推しの動物」に投票したり、「動物に関連したクイズ」に答えたり、ユーザーが能動的に参加して楽しめるのも魅力です。
2つ目の謎解きイベント「とべ動物園謎解き周遊『ひらめき! とべ動物園探偵団〜3つの事件と隠された真実〜』」は、園内を周遊しながら謎解き体験を楽しむことができます。
どうぶつガイドと同じく「特定の場所へ実際に足を運ぶことで、その場所にひもづいたコンテンツの視聴」ができる“現地体験型”というAurisの特性が活かされています。
園内にある手がかりから謎を解いていく新感覚のアトラクション(有料)で、あらかじめ音声が登録された“指定の場所”でコンテンツを視聴しないと、謎を解くことができないという仕掛けになっています。Aurisの開発を手掛けたGATARIは「体験者が主体的に学びながらコンテンツを楽しめる仕組み」と語っています。
両コンテンツは、それぞれローンチから1ヵ月間で利用者が100人を超え、いずれも高い注目を集めています。ともに施設を増設したり、スタッフの負担を増やしたりすることなく動物園と動物たちの魅力を発信し、来園者の満足度向上に寄与しています。
動物園は最新テクノロジーでますます魅力的に
いつもは触れることのできない動物の感触を再現するロボットや自動走行ロボット、MRプラットフォーム――最新テクノロジーを取り入れることで、近年の動物園はより魅力的な場所へと変わりつつあります。
テクノロジーの進化のみならず、動物学・教育学等の研究の進歩に伴って変わり続けるであろう動物園から、これからも目が離せません。
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<著者>
文/カワハタユウタロウ
フリーライター。大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、Eコマース・通販関連業界紙の編集部に約7年間所属。その後、新聞社系エンタメニュースサイトの編集部で記者として活動。2017年からフリーランスのライターとして、エンタメ、飲食、企業ブランディングなどの分野で活動中。