3年ほど前から業務委託の宅配ドライバーとして働く近藤剛史さん(仮名)。“新しい働き方”という紹介に惹かれ、思い切って飛び込んでみたものの、いまとなっては「失敗だった」と嘆きます。ルポライター増田明利氏の著書『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)より、日本の労働者の実態と、業務委託という契約形態のワナについて、詳しくみていきましょう。
ハンドルを握るのが怖い…約3年間「1日12時間労働」を続ける月収34万円・53歳宅配ドライバーの悲痛な叫び【ノンフィクション】
オーバーワーク続けるも、期待外れの収入に「情けない」
「デスクワークじゃないでしょ、基本は荷物を持って駆け足。そりゃ疲れる」
収入も期待していたほどではない。
「4週6休、月24日稼働で34万円前後、休みを週1にしたら37万円ぐらい。これが精一杯です。モデルケースとして記されていた月収40万円とか50万円以上可なんて無理です。少なくてもわたしには出せない数字ですよ」
1ヵ月の労働時間は平均280時間前後だから、1時間単価はせいぜい1,250円程度。近所にあるパチンコ屋がアルバイトを募集していて、時給が1,450円となっていたから嫌になる。
「ガソリン代はもとより、車の維持費は全部自分持ち。タイヤ交換やオイル交換用に天引きしておくのを含めると4万円ぐらい出ていきます。これも大きいですよ」
運送会社の社員ではないから社会保険は自治体の国民健康保険と国民年金に加入しているが、この保険料も毎月6万円ちょっと払っている。
「こんなわけで相変わらず妻のパート収入が頼りなんです。情けなくなってくる」
体調も良くない。この仕事を始めて腕痛、腰痛、膝痛がひどくなった。休んでも疲れが取れず、ひどい倦怠感に襲われる日もある。
「やっぱり働き過ぎなんでしょうね。自分でも危険だと思うことがあるから」
特に昨年末はひどかった。12月はお歳暮とクリスマスが重なるので荷物の量が格段に増える。休みはたった3日で、大晦日も夜8時まで働いていたほどだ。初めて月収が40万円を超えたが労働時間は320時間もあった。
「三が日はどこへ行く気もなかった。寝正月というより過労で倒れていたのに近い」
最近は心配した奥さんに「もう辞めた方がいい」と言われている。
「妻が言うには、いつも顔色が悪いし人相も変わったと。まあ、自分でも鏡を見ると急に老け込んだなあと思います」