3年ほど前から業務委託の宅配ドライバーとして働く近藤剛史さん(仮名)。“新しい働き方”という紹介に惹かれ、思い切って飛び込んでみたものの、いまとなっては「失敗だった」と嘆きます。ルポライター増田明利氏の著書『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)より、日本の労働者の実態と、業務委託という契約形態のワナについて、詳しくみていきましょう。
ハンドルを握るのが怖い…約3年間「1日12時間労働」を続ける月収34万円・53歳宅配ドライバーの悲痛な叫び【ノンフィクション】
朝から晩まで、労働時間は1日12時間にも
「よーし、稼げるだけ稼ぐぞって意気込んで始めたけど、稼ぐのは簡単じゃなかった」
配達する荷物の単価は大きさ、重さで細かく分けられていて80円から160円。平均すると約140円ぐらい。
「1日に配達する荷物の数は少なくて100個、多いときは120個くらいです」
必然的に労働時間が長くなる。営業所に出勤するのが朝7時30分頃、荷物を積み込んで出発するのが8時ジャスト。ここから集荷と配達を繰り返して終了できるのは早くて夜8時、道路事情が悪かったり不在で再配達が何度もあると9時でも終わらないことがある。
「1日の仕事の流れとしては1便が通販会社の荷物で地方の名産品やら化粧品、小物家電品、書籍などが大半です」
約30軒に配達し終了すると、その足で会社が契約しているスーパーへ直行する。
「ここで積み込むのはお米、ミネラルウォーター、カップ麺、ビールや清涼飲料水、レトルト食品がほとんどです。1軒で5キロのお米を2袋とミネラルウォーターを2ケースとか、24本入りの缶ビールのケースを2つとカップ麺を1箱、ウィスキーとか焼酎のジャンボボトルを5、6本。こんな感じです」
スーパーの配達は2便あり、午前便分が終わった2時前後にようやく昼休憩を取れる。時間が押して休憩を取れないときは運転しながらコロッケパンとかカレーパンを食べておしまいということもある。
「もう一度店に戻って2便目の荷物を積み込み、配達し終えるのが夕方5時頃です」
仕事はまだ続き、次に向かうのはホームセンター。当日配送の18~20時の時間指定された荷物を積み込んでまた走り回る。
「ここの荷物は重たくてね。テレビ、布団、畳の上敷、組立て式の家具、自転車、ペット用品、介護用品。こういったものが多い」
20時までに配送し終えれるのはまれで、21時近くまでかかってしまうことも度々。客の方から時間指定してきたのに不在ということもあってイラッとすることがある。
「もう終わったときには一気に疲れが出てきます。エレベーターのない古いアパートや団地を多く回ると腕と太ももが痛くなるし」
仕事開始が7時30分で終業が21時近く。決まった休憩時間はなく15分~20分の細切れ休憩を4、5回取るだけ。すると労働時間は12時間ぐらいになる。