地球や太陽は「天の川銀河」の中にある

未来の世界で、あなたは宇宙旅行に出かけました。

もしもそこで宇宙人と出会ったならば、地球という場所をどう説明しますか?

「どの星から来ましたか?」と宇宙人に聞かれて、「地球から来ました」と答えたとしても、ほぼ100%宇宙人には伝わらないでしょう。なぜなら地球は太陽の周りを回る「惑星(わくせい)」にすぎず、太陽のように自ら輝く「恒星(こうせい)」ではないからです。

この広い宇宙の中で地球の位置を直接確認することは、ほぼ不可能なのです。

そのため、宇宙人に地球の場所を説明するには、まず太陽の位置を説明する必要があります。では一体、太陽は宇宙のどこにあるのでしょうか?

地球や火星などの惑星がある太陽系は、「天の川銀河(あまのがわぎんが。銀河系)」と呼ばれる銀河の中にあります。天の川銀河は、太陽と同じような約2000億個の恒星と、星間(せいかん)ガスからできていて、その真ん中の膨らんだ部分を「バルジ」と言います。

バルジの直径は約1万5千光年(1光年=約9兆4600億km)です。そして天の川銀河を真上から見ると、大きく渦を巻いているように見えます。

太陽の位置は、天の川銀河の中心から約2万8千光年の距離にあります。天の川銀河の中心部のバルジを都市部だとすれば、地球は都市のはずれにあると言えます【図表】。

出所:NASA/JPL/Our Milky Way Gets a Makeover Artist Concept
【図表】天の川銀河を真上から見たイメージ図  出所:NASA/JPL/Our Milky Way Gets a Makeover Artist Concept

夜空を見上げると、光の帯のように輝く天の川を見ることができます。実はこの天の川こそが、天の川銀河を内側から見た姿。地球も天の川銀河の一部なのだと実感する景色です。

私たちは、地球が宇宙の中心のようについ考えてしまいますが、宇宙には無数の銀河があり、地球や太陽がある天の川銀河は、その無数にある銀河の一つにすぎないのです。

私たちが見上げる天の川は、「天の川銀河の断面」

地球は自転しながら、太陽の周りを秒速29kmの速さでまわっています。太陽を中心とした太陽系は「天の川銀河」の中心から約2万8000光年の距離にありますが、実は太陽系自体もまた、銀河の中心を秒速約240kmでまわっているのです。

普段の生活の中で、地球が太陽の周りを、太陽系が天の川銀河の中心を、猛烈なスピードでまわっていることを感じることはできません。

しかし、夜空に浮かぶ「天の川」を見れば、確かに地球が太陽の周りをまわっており、そして天の川銀河の中にいるという事実を知ることができます。

天の川が夜空に明るく輝くのは、夏から初秋にかけてです。

銀河系の中心方向は、光り輝く多くの恒星が密集しています。日本がある地球の北半球が「夏」のとき、地球の夜側は天の川銀河の中心方向を向きます。すると、多くの星の集まりを見ることができるので、夏の「天の川」は明るく輝いて見えます。

反対に、「冬」は星が少ない天の川銀河の外側方向を見ることになるので、天の川を見つけることは難しくなります。

つまり、夜空に見られる天の川は、地球にいる私たちから見た天の川銀河の断面の姿なのです。

【著者】宇宙 すずちゃんねる 
数億年後の地球の姿や太陽系惑星の秘密、生命誕生の奇跡など、ロマンあふれる宇宙について解説する宇宙科学YouTubeチャンネル。チャンネル開設からわずか2年足らずでYouTube登録者数は27万人を超える。

【監修】渡部 潤一 
1960年福島県生まれ。1983年東京大学理学部天文学科卒業、1987年同大学院理学系研究科天文学専門課程博士課程中退。東京大学東京天文台を経て、現在、国立天文台上席教授および総合研究大学院大学教授。国際天文学連合副会長。
著書に『賢治と「星」を見る』(NHK出版)、『第二の地球が見つかる日』(朝日新書)、『面白いほど宇宙がわかる15の言の葉』(小学館101新書)など多数。