近年、世界中で老化に関する研究が行われ、老化のスピードを遅くする、または逆戻りさせるという可能性がみえてきました。体を若返らせる、寿命を延ばすといったことが現実に近づいてきているようです。本稿では、京都府立医科大学大学院医学研究科の医学博士・内藤裕二氏が老化と腸の密接な関係について解説します。

(※写真はイメージです/PIXTA)
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腸が老いると血管も老いる
最後に腸と血管の関係についても解説します。100年前、米国のウイリアム・オスラー博士が「人は血管とともに老いる」という有名な言葉を残しました。動脈硬化は血管の老化の代表ともいえる状態ですが、腸内環境と動脈硬化には密接な関係があります。
近年腐敗菌がつくる物質TMAO(トリメチルアミン N オキシド)が動脈硬化の起因や進行に関わっていることがわかっています。ヒトによる研究でもTMAOが血中に多いと心疾患のリスクが高いと報告されています※3。TMAOは慢性腎臓病の誘因や悪化にもつながっており、腸の老化があらゆる臓器に影響していることがわかっています。
腸を若返らせることは、見た目が若々しくなるだけでなく、病気を防ぎ健康維持にも大きく役立ちます。腸の若返りは20~30代から始めて、ミドル~シニア世代まで継続していきましょう。
参考
※1 Nature Medicine volume 25, pages1843 1850 (2019)
※2 Nature Aging volume 1, pages295 308 (2021)
※3 N En gl J Med,368:1575 1584,2013
内藤 裕二
京都府立医科大学大学院医学研究科
教授/医学博士