高齢で多額の現預金がある場合

では、高齢で現預金をたくさん持っている方で、多額の相続税がかかりそうな場合は、「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」のどちらの制度を選ぶべきでしょうか。

結論からいうと、相続時精算課税制度のほうがお勧めです。なぜなら、暦年課税制度は死亡前3年から7年間の贈与財産が相続財産に加算されることになりますが、相続時精算課税制度であれば、110万円を贈与した人がいつ死亡しても、相続財産に加算されることはありません。高齢で、相続が近い将来に発生する可能性がある方にも、相続時精算課税制度が有効です。

その一方、被相続人が元気で7年を超えて生きる可能性がある場合は、暦年課税が選択肢です。とくに富裕層の間では、年110万円を超える金額を長期間贈与することで相続財産を減額でき、贈与税と相続税の合計が、贈与をしなかった場合の相続税額より少なくなる可能性があります。精算課税で基礎控除額を超える贈与分は、特別控除の枠に入り、相続財産に加算されるため、節税の余地が限られてしまいます。

ただし、精算課税で自宅を贈与すると、相続の際に自宅土地の評価額を80%減らす「小規模宅地等の特例」が使えなくなるため要注意です。この特例を利用するつもりなら、暦年課税を検討しましょう。

[図表2]相続時精算課税か暦年課税かを選ぶ際のポイントの例

一般の方の相続税についてシミュレート

いわゆる「中流層」の方の相続税について、精算課税を選んだ場合と、暦年課税を選んだ場合について、それぞれシミュレーションしてみましょう。

母親の財産:自宅2,100万円+預金3,000万円
相続人  :長男・次男…いずれも別居で持ち家あり

★精算課税を選んだ場合の相続税 

まず、特別控除で長男に自宅を贈与し、基礎控除で長男と次男に預金を年110万円ずつ贈与します。2024年から母が亡くなる28年まで5年間続けた場合、相続財産は4,000万円で相続税の基礎控除を下回ります。

★暦年課税を選んだ場合の相続税 

基礎控除で長男と次男に預金を年110万円ずつ贈与すると、相続財産は自宅と預金のほか、死亡前3年間以外の2年分から200万円(100万円×2人)を差し引いた加算額900万円の計4,900万円。基礎控除を上回り、相続税が発生します。

[図表3]相続時精算課税で相続節税をするイメージ

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

★相続時精算課税制度を使った贈与についてはこちらをチェック!
「相続時精算課税による贈与」で節税!資産家の相続税対策の新常識

★相続時精算課税についてはこちらをチェック!
相続時精算課税は相続税の前払い。その仕組みをしっかり理解して有利な手続きをしましょう。

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