労働者協同組合に設立・参画という新たな選択肢

そのような状況下を踏まえ、ミドルシニアにとって、労働者協同組合の設立が起業の選択肢の1つとして挙げられると考えます。

2022年10月1日に労働者協同組合法※5が施行されました。同法は、「協同労働」の理念を持つ団体のうち、同法の要件を満たす団体を「労働者協同組合」として法人格を与えるとともに、その設立、管理等の必要事項を定める法律です。「協同労働」とは、働く人が自ら出資をし、事業の運営に関わりつつ、事業に従事するという働き方を指します。協同労働に関わる人達(組合員)は、組合を組織し、組合の「出資」「経営」「労働」のすべてを担うことになります。

3名集まれば設立することができるため、1人で起業をするよりは、精神的にハードルも低いと考えます。同法の施行を機に、多様な働き方の1つとして、「協同労働」が広まっていくことが期待されています。

法律の施行以降、約2年半で約90の労働者協同組合が設立されています。その多くは、東京圏以外のエリアで設立されており、地方を中心に労働者協同組合設立の動きが出始めています。あくまで一例としてですが、70歳を超えた方が代表を務められ、高齢者の組合員同士で活動をしている労働者協同組合上田では、地域社会に役立つ仕事をする「第二の人生」として、さまざまな仕事に取り組んでいます。

労働者協同組合には定年がありませんし、働き方や仕事内容も働く組合員同士で話し合いながら進めていくことができます。もちろん、リーダーシップのある人が代表をやられているケースもありますが、普段から、皆で合意形成を行いながら事業を進めていくことを基本としているため、年齢を理由に代表が変わっても、継続的に事業を行っていける組織形態だと考えます。

高齢になってもできるだけ長く、いままでの経験やスキルを活かし、事業を立ち上げ、さらにその事業を継続的に続けていけるようにしていきたいという思いがある方にとって、労働者協同組合での活躍という道もあるのではないでしょうか。

やりたいことを活かした起業

定年まで働き続けていれば、誰でも何等かの経験やスキルは保有しています。多様な働き方が増えていくなか、定年後もいま世の中にある一般的な働き方に自分をあわせるのではなく、自分のやりたいことをまず起点として働き方を選んでいける時代に変わってきたと感じます。

会社を立ち上げるというところまで至らなくても、1人ひとりがやりたい仕事を追求すれば、多くの業を起こすことにもつながっていくのではないでしょうか。

参考

※1 2023年度起業と起業意識に関する調査https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kigyouishiki_240118_1.pdf

※2 freee 株式会社

https://corp.freee.co.jp/news/freee-2019-9415.html

※3  中小企業庁

中小企業庁2019年度版「中小企業白書」p.170

※4 東京商工リサーチ

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210118_01.html

※5 労働者協同組合

https://www.roukyouhou.mhlw.go.jp/good_cases/koujirei17

小島 明子
日本総合研究所創発戦略センター
スペシャリスト