ブロックチェーン、Web3はどのように社会を変えるのか? ビットコインなどの仮想通貨投資は定着したものの、それ以外の応用についてはいまだに形が見えず、一時期の熱気を失っている様子の現在、興味深い先行事例となるのが中国です。「暗号通貨は絶対禁止」の一方で、「ブロックチェーン大国を目指す」という方針を持ち、まさに暗号通貨以外のブロックチェーン社会実装に真っ向から取り組んでいます。今回はそんな中国の事例を紹介するとともに、日本社会のブロックチェーン実装の未来予測について、ジャーナリストの高口康太氏が解説します。
幻滅期のブロックチェーン、中国の社会実装が示す新たな可能性

ブロックチェーンで信頼を証明することで付加価値が生まれる

(※写真はイメージです/PIXTA)

報告書に記載されている事例ではありませんが、私がお気に入りなのは民間企業が開発した、ブロックチェーン・ベビーシッター・評価システムです。ベビーシッターの派遣サイトを見ると、今までの雇い主からの口コミ評価がついているのですが、この評価は本当に信頼できるのでしょうか。

 

派遣サイト側からすれば、高評価のベビーシッターをたくさんそろえたいという動機があるので悪い口コミは消してしまうかもしれません。そこでブロックチェーンを使えば、会社側でも改ざんできない評価システムができるというわけです。

 

14億人の人口大国である中国には悪徳事業者や詐欺師もたくさんいます。ですから中国人は猜疑心が強い人が多いのも当然なのですが、ブロックチェーンで信頼を証明することができれば、付加価値が生まれるという考えがあるのでしょう。

 

日本とは文化が違うのでそのままコピーするのは難しい事例もありますが、それでも多様な発想で社会実装を試みる中国の取り組みは一見の価値あり、です。
 

 

<著者>

高口康太

ジャーナリスト、千葉大学客員准教授。2008年北京五輪直前の「沸騰中国経済」にあてられ、中国経済にのめりこみ、企業、社会、在日中国人社会を中心に取材、執筆を仕事に。クローズアップ現代」「日曜討論」などテレビ出演多数。主な著書に『幸福な監視国家・中国』(NHK出版、梶谷懐氏との共著)、『プロトタイプシティ深圳と世界的イノベーション』(KADOKAWA、高須正和氏との共編)で大平正芳記念賞特別賞を受賞。