健康な腎臓を保つためには一体どんな食生活がいいのでしょうか。医師の別府浩毅氏は著書『透析専門医が教える! 健康長寿の人が毎日やっている腎臓にいいこと』の中で、「これさえ食べればいいというものはない」と言っています。一体どういうことでしょうか? その理由を本書から紹介します。
減塩はとくに重要! できれば1日6g以下に
・加工食品には塩分が多く、外食は塩分過剰になりやすい
糖尿、高血圧、脂質、尿酸は、腎機能を悪化させる因子です。とくに高血圧は、もっとも腎臓への影響が大きいと言われているため、塩分を減らすことが基本の考え方になります。2013年に日本食がユネスコ無形文化遺産に登録され、健康食として取り上げられることが多くなりました。ただ、日本人の食塩摂取量はかなり多いことを、ご存じでしょうか?
令和元年に行われた国民健康・栄養調査の結果によると、日本人の塩分摂取量は1日約10gでした。約20年前の平成7年は1日約14gだったので、20年間で約4gの減塩が進んだことになりますが、腎臓を守るにはさらなる減塩が必要です。塩分摂取量が多いと、体内で余った塩分を腎臓で処理しきれなくなり、余分な塩分が体内に蓄積されます。
そうすると血液の浸透圧が高くなり、脳が塩分濃度を薄めようとして「水を飲みなさい」と指令を出します。水を飲むことで体内を流れる血液の量が多くなり、血管に圧がかかって血圧が高くなるのです。高血圧は腎臓にいい影響を与えないので、負のスパイラルに陥ることがわかっていただけるのではないでしょうか。医師によっては「塩分は1日5g以下」と言う人もいますが、わたしは6g以下を目指すように患者さんへお伝えしています。
ちなみに当院へ通う高血圧の患者さんの塩分摂取量は、1日平均12 ~13gです。外食の多い人は、15g近く摂取していることも少なくありません。実際のところ、1日平均6gでも相当厳しい基準であり、実行するためには高度なレベルの管理が求められます。1日6g以下を目指すには、1食あたり2g程度に抑えなければいけませんが、食パン1枚に1g、お味噌汁1杯にも1gの塩分が入っています。
カップラーメンをスープまで飲み干せば8~9g、カレーライスは10gです。この数値だけ見ても、1食2g以内に抑えることがどれだけ難しいのか、容易に想像できるのではないでしょうか。
・加工食品や惣菜は、塩分量が多い
加工食品にはリンが多く含まれていますが、腐りにくくするため、そして素材のおいしさを引き出すために、塩分もかなり多く使われています。過去の著作『心臓にいいこと』でも、簡単で安く、すぐに食べられる加工食品には裏があることをお伝えしましたが、腎臓を健康に保つために注意が必要な食材でもあります。ぜひ、加工食品は控えるように心がけましょう。
なお、冷凍食品やコンビニやスーパーで売っているお惣菜にも、塩分が多く含まれているので、わたしはかならず裏面を見て、塩分がどれほど入っているのか確認するようにしています。ちなみにコンビニの惣菜なら、1~2gはかならず入っていると考えて間違いありません。三角おにぎりにも、1~1・2gほど含まれています。
ですから、コンビニのおにぎりを2~3個食べて、パンも一緒に食べれば、計り知れないほど多くの塩分を摂っていることを自覚したほうがいいでしょう。
・塩分量は食品成分表示でかならず確認しよう
減塩のポイントは、主食がパンや麺類に偏らないこと。麺にも塩分が入っているため、ラーメンやうどん、蕎麦の汁を飲めば、塩分の上乗せになってしまいます。麺類を食べるときは、できるだけスープを飲まないようにしましょう。漬物や汁物を減らすことも、減塩につながります。
そして定食は、1人前で4~5gの塩分が含まれることが多いため、外食時は味噌汁を半分にする、漬物は控える、かけ醬油やソースを減らす、といった工夫をすることで、減塩することができます。なお、味に物足りなさを感じたときは、七味や山椒、生姜、わさび、からしといった香辛料、酢やレモンといった酸味で味を足すことをおすすめします。これらは、それほど腎臓に支障をきたさないからです。
最大の減塩法は、食品にどの程度の塩分が含まれているのか、その都度確認する習慣をつけることです。わたしたちが普段よく食べる食品の塩分量は、すでにお伝えしましたので、ぜひ覚えておきましょう。また、食品成分表示にはかならず「塩分相当量」の記載があります。購入するとき、食品成分表示を確認する習慣をつけることから始めてみませんか。
別府浩毅
医師