YouTubeの家事動画は、家事の労働対価16万円を上回った

ちょうどその頃に60歳を迎えた私は、会社を辞め、フリーランスとしての仕事を始めた。割と家にいる時間が増えたことで、自ずと家事をやる時間も増えることになった。

家事の何が楽しいかと聞かれれば、私はこう答える。終わりがあること。評価がすぐもらえること。

私がフリーのコンサルタントを始めたばかりの頃、売上9兆円を誇るある小売業グループのプロジェクトに参加したことがある。プロジェクトの目的は、新規事業開発。要するに、新しいイノベーションの柱を、本業以外にもうひとつ作るということだ。

フリーになりたての私にとっては、実に心躍るプロジェクトだった。しかし……。プロジェクトチームで決めたことが、クライアントの役員会で決まらない。役員会で決まらないと予算が決まらない。時間ばかりが過ぎる。そのうち、プロジェクトの担当役員が異動になる。新しい担当役員のもと、また一からプロジェクトを始めてくれと言われる。

あの時に、大企業って本当につまらない組織だと思った。誰もリスクをとろうとしない。誰も決めようとしない。それで何がイノベーションだ! アホ! プロジェクトを100年やっても、成果なんか出るわけがない! 本当に時間の無駄だと思った。

それに引き換え、家事はすぐに成果が出るのだ。掃除をすれば、部屋はすぐにきれいになる。洗濯を終えれば、洗濯機は空になる。料理をすれば、誰かが美味しいと評価をくれる。小さな達成目標がないと、大きな目標は永遠に達成されない。目標を達成すると気持ちがいいもんだ。

だから家事が終わると、とても気持ちがいい! 特に、料理を取り上げてみると、最近はInstagramをはじめ、いろんなSNSで写真を投稿できるようになった。料理を作れば、自分以外に世界中の人が見てくれて評価をくれる。たとえ、ひとり暮らしで評価をくれる家族がいなかったとしても、世界中の人がアプリを通じて評価してくれるシステムができあがっているのだ。

私の場合はブログがメインだったが、もちろんInstagramもやっているし、なんならアカウントも5個以上持っている。去年から始めたYouTubeも、そのほとんどが料理の動画である。もちろん洗濯や掃除のシーンだってあるから、家事をすることで動画に高評価がもらえ、さらにチャンネル登録までしていただけるのだ。

冒頭に「家事の労働対価は月給にすると約16万円」と書いたが、私がYouTubeでいただいている家事動画の対価はその額を上回る。これが楽しくないわけがない。