ヒューマノイドブームの火付け役はテスラ
ヒューマノイドが急激に注目されるようになったのは、2021年8月、テスラの発表会において、CEOのイーロン・マスク氏が、「今後、実用的なヒューマノイドを開発し、市場に投入する」と表明したことがきっかけです。話題性のあるマスク氏ならSF映画のように、ヒューマノイドが浸透する社会を実現できるかもしれない、と多くの人が感じたのです。
その1年後、テスラは実際に自社開発のヒューマノイドであるTesla Bot「オプティマス」のプロトタイプをステージで公開。それから順次、YouTubeを通して開発状況を発信しています。
2024年4月にロイター通信は、イーロン・マスク氏が投資家向け電話会議で「オプティマスの販売を来年末にも開始できるかもしれない」「ヒト型ロボットを開発する企業の中でテスラが一番大量生産できる状態にある」と述べたと報道しています。
アマゾンがAgility Robotics「Digit」をロボット研究開発施設でテスト
米国Agility RoboticsのDigitは実用化が近いヒューマノイドとして注目されています。宅配の自動化への参入を模索している自動車メーカーのフォードがテスト運用したのに続き、米シアトルの南にあるAmazonのロボット研究開発施設でDigitがテストされている動画が公開されて話題に。
Amazonはスマート物流倉庫と自動化を急速に進めていて、デジタルツインやロボットの導入に積極的です。動画では、人間のスタッフの代わりにプラスチックコンテナを棚から別の棚やテーブルに運ぶ様子が公開されています。
メルセデスがApptronik「Apollo」を試験導入
米Apptronik社が開発したApolloは、メルセデスの工場で試験導入されたことで話題に。Apolloは二足歩行タイプだけでなく、上半身だけのバージョンや車両機構で移動するバージョンも用意されています。これは現場に合わせて高い実用性を確保するためです。
Apptronik社はメルセデスベンツが製造工場のスタッフとしてApolloを試験的に導入し、「身体的負担が多く、人々がやりたがらない反復作業が中心の、単調な作業を自動化する最先端のテクノロジーを提供できる」としています。
ディズニーのヒューマノイド開発にNVIDIAのシステムを採用
2024年3月に米シリコンバレーで開催されたAIとGPUの世界最大級のイベント「GTC 2024」の貴重講演で、米NVIDIA(エヌビディア)のCEO、ジェンスン フアン氏は、同社の超小型コンピュータ「Jetson」(ジェットソン)を搭載したディズニーが開発した可愛いロボットたちを紹介して会場を沸かせました。
ディズニーは以前からアトラクション等でのロボットの活用に積極的で、同社は「オーディオアニマトロニクス」と呼んでいます。このロボットはディズニー・リサーチとウォルト・ディズニー・イマジニアリング・リサーチ&ディベロップメントが開発したロボットで、表現力豊かなモーションで愛らしく動き、ディズニーランド・パークの「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」(スターウォーズのアトラクションやショップ等のエリア)で披露した動画が公開されています。また、ロボットが動きや振る舞いを学習するため、最近はシミュレータソフトウェアが活用されていますが、そこにはNVIDIAの「Isaac SIM」が採用されていることも明らかにされています。
ちなみに、NVIDIAのJetsonは一般に販売され、Isaac SIMは無料で公開されているプラットフォームです。NVIDIAは更に、ヒューマノイド開発用のプラットフォーム「GR00T」(GRゼロゼロT)を2025年に発表することも公言しているため、これをきっかけにして今後は同様のシステムを使って、他にも多くの開発企業から様々なヒューマノイドが登場してくる可能性があります。