今、ヒューマノイド(人型ロボット)がとても注目されています。自動車などの生産工場では従来から、ロボットの導入は盛んに行われてきました。生産ラインを組み換えたり、作業内容の変更を行う際に工場の設備に大幅な変更を行ったりする必要がありましたが、ヒューマノイドロボットは、従来の設備や道具をそのまま流用できるという点で人の代替としての役割や災害現場や宇宙開発で人間の代わりに危険な任務を担うロボットとしての役割も期待されています。テスラ、NVIDIA、ディズニー、フィギュアAI、Agility、Apptronikなど、多くの企業が関連技術への参入を発表していますが、その狙いと今後の未来についてIT&RTジャーナリストの神崎洋治さんが解説します。
テスラ、ディズニーなど企業が次々に参入…実用化重視に舵取り、ヒューマノイドの最前線

身体能力に優れた「Unitree G1」

最近注目を集めているヒューマノイドのひとつが「Unitree G1」です。ボストン・ダイナミクスのアトラスと同様、人間ではできない動きや、外部からの衝撃にも簡単には倒れない動画が公開され、その身体能力の高さに驚きの声が上がっています。身長127cm、重さ35kgと子どもくらいのサイズをしていて、今後は社会実装に向けた連携パートナーやユースケースが紹介されることが期待されています。

生成AIをヒューマノイドに活用した「Figure AI」

生成AIの大規模言語モデル「ChatGPT」を開発したOpen AIが出資し、マイクロソフトやNVIDIA、元アマゾンのジェフ・ベゾス氏等が投資しているFigure AI社は、ChatGPTと連携したヒューマノイド「Figure 01」の動画を公開して話題に。

動作はすべて会話でやりとりされていて、会話は一問一答だけではなく、一連の関係性を維持したままを継続させている点は、生成AIを導入したメリットのひとつと言えるでしょう。Figure 01は、人と音声で会話しながら、人の指示を理解し、意図を解釈して行動を起こす様子と、そのレベルが高いことに多くの研究者や開発者も衝撃を覚えました。多くのSF映画で見たヒューマノイドやスターウォーズのC-3POのように、作業の指示が発話してできるようになり、意図をくみ取ってまるで人間のように応対してくれる時が近づいていることを実感したのです。

生成AIの登場がブレークスルーに

生成AIの登場でロボットの頭脳や知性のレベルが飛躍し、ブレークスルーが起こりました。これにより、ヒューマノイドの実用化や社会実装が加速すると見られています。多くの企業がヒューマノイド開発に参入すれば、その進化を更に後押しすると期待されています。



<著者>
神崎洋治
TRISEC International代表取締役

ロボット、AI、IoT、自動運転、モバイル通信、ドローン、ビッグデータ等に詳しいITジャーナリスト。WEBニュース「ロボスタ」編集部責任者。イベント講師(講演)、WEBニュースやコラム、雑誌、書籍、テレビ、オンライン講座、テレビのコメンテイターなどで活動中。1996年から3年間、アスキー特派員として米国シリコンバレーに住み、インターネット黎明期の米ベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材した頃からライター業に浸る。「ロボカップ2018 名古屋世界大会」公式ページのライターや、経産省主催の「World Robot Summit」(WRS)プレ大会決勝の審査員等もつとめる。著書多数。