フードテックは環境問題や社会的な問題も解決する
そのほかにも、地球環境や社会的な問題に配慮したサステナブル食品が多くの企業で続々と開発されています。
株式会社ニチレイフレッシュは、人工的に製造されたイクラである「みらいくら」の試験販売を2023年9月から開始。昆布のぬめり成分として知られるアルギン酸や醤油、米発酵調味料などを使って、見た目はもちろん味も本物のイクラに近づけています。
食感や旨みの再現など課題は残るものの、海藻由来の原料でコレステロールを含まないため、健康に配慮した食材としても注目されています。
日清食品株式会社は、必要な栄養素をバランスよく摂取できる「完全メシ」シリーズを展開。日本人の食事摂取基準で設定された33種類の栄養素と、三大栄養素であるたんぱく質・炭水化物・脂質のバランスが整って、なおかつ美味しさにこだわった商品をさまざまなメニューで販売しています。
ここでは、日清食品が独自開発した塩、米、麺、肉の最新フードテックをみていきましょう。
まずは塩。塩分の取り過ぎを防ぎつつ、なおかつ美味しく食べるための独自の減塩技術があります。世界中から約170種類もの塩を集めて研究を重ね、ミネラルやアミノ酸などを配合することによって、塩が少なくても美味しく感じられるようにしているのです。
続いて米。炊く際には、お湯をかけて5分で戻すことができます。さらに、米と栄養素を一緒に炊き込むことで、米本来の美味しさはそのままに、身体に必要な栄養摂取も可能に。生産工程で食物繊維やたんぱく質も一緒に炊き込んでいるのです。また、米粉状にしたうえで、栄養素と一緒に米の形に再合成する技術も使われています。
麺類においては、麺の中心層の一部に食物繊維やたんぱく質を使用することで、美味しさを損なわずに栄養素を配合する「三層麺製法」を開発。さらに、小麦粉を食物繊維へ置き換えることで、カロリーを抑える効果も。
最後に肉です。肉本来の美味しさを残したまま、大豆たん白や野菜などをまぜてミンチ状にしてフリーズドライ加工した技術が使用されています。
理想的な栄養バランスを追及しながらも普段の食事と変わらない美味しさにこだわっていることがわかるかと思います。「完全メシ」シリーズはほとんど調理を必要としない気軽さも魅力です。忙しい現代人にも取り入れやすく、偏った食生活から起こる栄養過多や栄養不足の改善に重宝されるでしょう。
フードテックがもたらしてくれる美味しくて安全な食事
最新の科学技術を駆使することで、「あたらない牡蠣」のように従来の問題点や課題を克服した食材が今後も増えていくことが期待されます。
また、植物由来の原材料を使った代替食品や動物細胞の一部から作成する培養肉は、今後ますます深刻になる世界的な食糧不足への解決の糸口になるだけでなく、宗教上や健康上、思想上の問題から特定の食材が食べられなかった人たちにより多彩な食の楽しみをもたらしてくれるでしょう。
フードテックの発展によって、これまでの食の常識が覆り、より美味しく安全に食事を楽しめる未来が待っています。
吉田康介(フリーライター)