ダイエットはまず成功しない

ダイエットはなかなかうまくいきません。短期間で体重減少が起きても、ほとんどの人がリバウンドで数ヵ月もすれば元の体重に戻ります。ダイエットの本当の目的は、1年後、2年後にやせたままでいられるかどうかです。それを成功させるには、食生活の意識革命を起こさないとダメなのです。


最近流行っているのが低糖質ダイエット(低炭水化物ダイエット)です。これは糖質を極端に抑えて、タンパク質や脂肪は好きなだけ食べていいというものです。糖質というのは甘い物だけでなく、からだの中で糖になる炭水化物であるご飯やパンを減らすということです。他のダイエット法に比べて、早く体重が落ちることもわかっています。このダイエット方法は、単に炭水化物を摂らないからやせるだけではないのです。


低糖質ダイエットは、タンパク質や脂肪を好きなだけ食べていいのです。しかし、好きなだけ食べていいと言われると、無制限には食べなくなります。人間の脳は、食べてはいけないと言われれば、食べたくなり、好きなように食べていいと言われると適度に食べてそれ以上は食べなくなります。ビュッフェスタイルのレストランで、食べ続けるということはないでしょう。それと同じなのです。


さらにご飯やパンを制限するので、一緒に食べる肉なども減ってしまうのです。結果として食べる量が減るのです。私たちがいかに主食をたくさん食べてきたかということが、炭水化物の制限をしてみるとわかってきます。つまり、無意識のうちに食べていた物を、意識して食べるようになります。これが低糖質ダイエットのいいところではないでしょうか。


習慣となっている、食べるという行為を、ご飯を減らすことで、食生活そのものを意識し始めるのです。つまり低糖質ダイエットは理性的、つまり大脳皮質の働きによってダイエットがうまくいくのです。無意識に間食をしていたのに、間食はやめよう、たくさん食べていたご飯を、減らそうという気持ちになってくるのです。食に対して意識革命が起きるのです。まさに脳を使った理性的なダイエットと言えるでしょう。

米山公啓
脳神経内科医