公任が伊周に手を差し伸べた理由

――花山院(本郷奏多さん)を襲撃するという大事件をきっかけに、大宰府(だざいふ)へ左遷され、母とも引き離された藤原伊周(ふじわらのこれちか・三浦翔平さん)。公任は伊周に母に会うことを許可するが……。

町田啓太さん(以下、町田):政権争いであったり、上り詰めていくぞみたいなところから今はシフトチェンジしていて、完全に変わっているかどうかというのは、まだやっぱり残っているものはあると思うんですけれど……。

そこから「対・人」として道長であったり斉信(ただのぶ)であったり、行成(ゆきなり)であったり、そのほかいろんな方と関わっていこう、やっぱり文芸とか管弦であったりとかそっち方面が自分的にはすごく興味があるから、そっちに進んでいこう、という頭になっている。

そんな中、公任からすると、やはりちょっと(伊周の)そういう振る舞いはいかがであろうか? みたいなところが多かった伊周があれだけ弱っていて、身なりもあれだけすさんだ姿になっていて、というところを見て、すごく本心から本当に母にただただ会いたいと。

(C)NHK
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「そうだ、この人は若くして役職を得て、精神的なところが大人になる前にそういう立場になってしまったりもしたから、本当に悲しい人なんだな」という「まだ子供なんだな、中は」というのが見えましたし、公任の中では父との関係というのも自分の中でもあるんだろうなと思うので、昔、エリート街道を絶対に上っていくだろうと思っていたころの自分の姿とも重なる部分が伊周を見ていてあったんだろうなと思って、そこでなんとか自分が道長の代わりに伊周に伝えるべきことを伝えてというところだったんですけれど……。​

本心からは本当に普通だったなら規則違反は好きではない人間だと思うんですけれど、そういうところではなくて、人として何か手を差し伸べてあげたい、寄り添いたいなという思いが公任の中では強まったんじゃないかな、伊周を見ていて、と思いました。葛藤ももちろんあるし、でも、温情的なところはやっぱりあふれてしまったんじゃないかなと思います​。

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